四年前、それまで経営していた会社を息子に任せ、農業法人を設立して農業を始めた友人の言葉。「四年目にして、トマトが何をほしがってるか、やっと分かるようになった」。もともと農家の生まれ。さまざまな業種を経験し、最後にたどり着いたのが、農業だった。大胆に計画し、決めたら徹底してやる、目的に向かって労を惜しまない、負けず嫌い、そして何より、夜明け前から日暮れまで黙々と身体を動かすことを厭わない、日本の農家に脈々と受け継がれて来た、血、DNAなのだろう。

 バブル経済崩壊以降、土木建設業の少なくない数の会社が農業分野に進出した。国が強く奨励した背景もある。私の周囲にも、大きな資本を投入し、大規模な施設を作って挑んだ例があるが、ほとんどは、失敗。本業の経営までも圧迫する事態に陥っている。多額の資金、立派な設備、最新の機械があれば成り立つ、農業という「業」は、そんな単純なものではない、という証だろう。

 「あれなぁ、オレが発明したんだ」と見せてくれた、アスパラガス畑の除草機。中古の稲刈り機械を購入し、自ら改良を加えたものだ。アスパラの収穫の際に、非力な女性が運搬作業をしやすいようにと、自転車の車輪を使った二輪車も考案したと言う。

 「孫が大人になる頃は、絶対に、農業の時代になる。中国やインドの国民みんなが、肉や魚を日常的に食べるようになってみろ。日本になんて、食料は入って来なくなるゾ。食料の自給率が四〇%を切る、そんな日本が、“美しい国”になんかなれるものか」。彼がつくった農業法人の名前は、「グランパ農園」という。「孫の代になって、じいちゃんが作った農場だって言ってくれればな。そのために、あと十年、頑張るさ」。六十六歳の新規就農オヤジ、誇れる友人の言葉に、日本農業の明日を見る思い――。枕は、ここまで。

 この欄で、何度か取り上げた旭川空港の「駐停車禁止」の“怪”のその後を少々。七月一日から、空港駐車場が有料になったのに合わせて、空港ビル前の道路から、「停車禁止」の標識が消えた。つまり、荷物や人を降ろすために、短時間、停車するのはOKということになった。もちろん、長時間の駐車は従来通りダメ。

 読者から、「空港駐車場は出る時に渋滞して大変です。誘導もありません。有料になって明らかに、不便」「一時間百円、五時間を超えると一律五百円という料金設定は、仕方ないのかなと思うが、一泊五百円は高すぎ。一週間の出張中、車を停めておくと三千五百円。これって土地の値段が安い旭川では、法外とも言えますよ」とのメールが届いた。早速、管理する空港ビル(株)に聞いた。

 「車が出る時の渋滞に関しては、ご指摘されたほどではないと認識しています。飛行機が到着した時に、短時間に多くの車が駐車場から出るため、ある程度は混雑するとは思いますが…。私どもの方には、そうした苦情は寄せられていませんし」とのお話。渋滞慣れしていない旭川のドライバーには、ちょっと我慢してもらう必要がある、ということだろう。「一泊料金については、今後の利用状況を見ながら、検討したいと考えています。確かに、一週間で三千五百円は安くないと思いますから」とのことだった。

 現地に行ってみて、まず感じたのは、駐車場が空いていること。有料化する以前は、ほとんどいつも満車の感じで、通路に駐車している車も少なくなかった。担当者の話では、平均すると面積的に六割ほどの利用率とのこと。バスを利用する人も増えたそうで、環境に対する負荷軽減の面からは、有料化は有効だったとも言える。

 まぁ、ターミナルビルの前に車を停車した途端、どこで監視しているのか、間髪を入れずやって来るお巡りさんと、毎度言い争いをしなくても良くなったのは、めでたし――。

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