「最低の編集長の直言ですね」という件名のメールが届いた。前々週、八月二十一日号の本欄についての感想である。以下、匿名のメール――

 いつも拝見しております。文章を生業としておられる方の辛口のコメントを毎回楽しみにしています。しかし、今回の記事は閉口です。

 その1 パート労働で働いている女性は、家庭で家事を急いで終わらせ仕事場に向かう。十時からの開店であれば、その前は準備の時間。彼女なりの仕事の手順があるはず。狭い旭川で、スーパーで十時前に開店し、お菓子屋のテナントと言えば○○だろ? 簡単に特定できる文を書いて憂さ晴らしとは、さすが旭川の中小企業。なにも、十時過ぎてからこのような事をしているのなら、腹を立てても仕方ないが、開店前に勝手に行って、勝手に腹を立てているだけ 五分や十分の心の余裕持てない? 急ぐなら、今後はコンビニにどうぞ。まったく典型的な、旭川のおやじと感じる。

 その2 旭川でそんな店、星の数ほどある。おばさんは、小言が仕事なのだ、仕事の邪魔をするのは良くない。笑顔満開のサービスを期待するならイオンへどうぞ。

 その3 はたして、動物園の恩恵を肌で感じることの出来る市民はどれほどいるのだろう。逆に、忙しくなるが給料に反映せず、ただ忙しく感じる人が多いはず。名の知れた居酒屋と言っても、勤めているのは雇われ店長にバイト。旭川とはそんなレベルの集合体。会社の金で飲み食いできるのなら、繁忙時間帯に高級店に行けばいいだけ。

 いつもは、反骨精神のこもった編集長の直言に「この狭い、しがらみだらけの旭川で良く書くなぁ」と関心していたが、連日の暑さでネタも出なかったのか?本音がでたのか?

 旭川には、まだまだ追求したい影の部分が沢山ある。お菓子屋の対応を愚痴るのもいいがもっと大義を追求して欲しい。

 で、匿名さんに宛てた私の返信メール――

 メールありがとうございます。最低の原稿だったかもしれませんが、菓子屋のテナントは、○○に限りません。決め付けられては困ります。

 これからも厳しいご意見をお待ちしています。よろしくお願いします。工藤拝

 「連日の暑さでネタも出なかったのか?」と言われれば、返す言葉もないわけで。こうしたお叱りの声に尻をはたかれ、ガツーンとやられて、「書く」という行為の怖さを実感しつつ、ネタを拾って歩こうと思います。

 読売新聞の八月三十一日付朝刊「混迷 夕張市役所」の記事。財政再建団体になった夕張市役所をリポートする連載。退職する職員があとを絶たず、その一人、市職員労組の書記長を務めた三十三歳の元職員の話だった。

 「4月以降、月給は26万円が19万円に減った。保険料などを除くと手取りは18万円。月給だけを見ると、生活保護の基準に該当するという」

 朝、先に新聞を読んだ私は、この手の話題には触れてはいけないと判断し、黙っていた。しばらくして、新聞を読み終えた家人が、ボソッと、「夕張市役所の職員の給料に関する記事には、必ず生活保護並みだとか、生活保護より悪いとか、そんな表現が出て来るの。すごく失礼よね」とつぶやいた。

 「失礼よね」の意味は、さまざまある。わが家の経済と比べて「失礼」なのか、生活保護を受給している人たちを比較の対象にすることが「失礼」なのか。そこは、アウンの呼吸で追及せず。

 国は、来年度から生活保護費を削減する方向だという。社会保障費の増大抑制のために、老齢加算の廃止、十五歳以上の子どもを持つ世帯に対する母子加算も段階的に廃止され始めた状況下、今度は、基準額そのものが引き下げられる。つまり、「生活保護レベル」が下がるということだ。夕張市の給与を「生活保護の基準に該当する」として自主退職した元職員の方も、もう少し待てば、生活保護のレベルをかなり上回る給料、ということになったのに。

 日本国の為政者は、本当に頭が良いと思う。「生活保護より悪い」などと格差社会を指弾されると、格差を表示する基準そのものを下げてしまうのだから。そうだ、格差なんて、相対関係の中の話なんだから、比較する相手のレベルが下がれば、最下層が下層に、下層がたちまち中層になっちゃうんだぁ。日本に、再び総中流家庭の時代が到来する日も遠くない。国も、町も村も、家庭も個人も、みーんな借金まみれの中流社会だ――。

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