「食べる量を減らすのよ、それしかないわ。そのお腹も少しは引っ込むんじゃないの?」――。家人の言葉である。スパゲティ、シーチキン、マヨネーズ、ちくわ、ハム・ソーセージ等々、食料品の値上げが続々だ。家族の年齢の割にエンゲル係数が高い我が家にとって、かなりの痛手となる。で、先述の家人の食事量削減宣言となった。厳しい指摘はその通り。無意味に出っ張った我が腹を改めて眺めるまでもない。

 それにしても、オーストラリアが百年に一度の大干ばつで小麦の生産が六割減だとか、経済成長が著しい中国で、肉類の消費が急激に伸びて国際価格が上がったとか、BSEや鳥インフルエンザ発生の影響もあり、欧米人が魚を食べるようになってマグロなどの魚の価格が急上昇したとか、史上最高値を更新中の原油価格が、輸送や包装のコストを引き上げたとか、まぁ、様々な要因があるのだろう。が、バイオ燃料ブームで、小麦畑をトウモロコシや菜種に切り替えたとか、サトウキビが燃料用として買い占められて高騰したとかの理由を聞き及ぶに至ると、あぁ、ホモサピエンスも来る所まで来てしまったのかなぁ、という気がしないでもない。

 地球上の三分の二の人々は、その日食べる物にも事欠いている、と言われる。飽食社会が三十年も続く日本では、想像もできないことだが、同じ地球に生きるヒトの三人に二人は、貧困と飢餓に直面しているのだ。あぁ、その事態を承知の上で、食い物を車の燃料タンクにブチ込んで走るのか…。物質的に過度に豊かになったヒトたちが環境に優しいと持ち上げるバイオ燃料が、そうでないヒトたちの飢えを助長する結果を招かないのか。そんなことを考えさせられる、我が家の食費切り詰め作戦開始である。枕は、ここまで。

 下川町を流れる清流、サンル川に国交省北海道開発局が建設を計画しているサンルダムについて、地元の下川自然を考える会など道内の十三の市民グループや自然保護団体などが一日、同開発局長や道知事に対し、要望書を提出した。十三団体は、自らの調査や開発局が公表しているデータなどをもとに「ダムを作らなくても、洪水は防げる」ことを趣旨とする冊子「サンルダムへの疑問」を作製、今年五月に開発局に提出して回答を求めた。開発局は八月、河川整備計画案を発表。同時に、住民などから寄せられた意見に対する開発局の「考え方」を公表した。

 その「考え方」には「疑問」に対する回答はほとんど示されていないとして、今回の要望書提出となった。治水、利水、サクラマス資源の三つの柱に対する疑問を提示し、十月十五日までに回答を求めている。「疑問」の詳細については、冊子「サンルダムへの疑問」を手に入れて読んでいただくとして、この全くムダなダムは国がお金を出すのだが、北海道も建設費の十四・八%を負担しなければならない。その額は、五百三十億円とされている当初予算で計算しても約七十八億円にのぼる。この手の工事の予算は着工後、どんどん膨らんで、結果的に二倍以上になるのが普通だ。職員の給料をカットしなければならないほど逼迫している北海道の財政から、計画段階でも七十八億円、最終的には百五十億円に達する可能性がある巨費を支出する余裕があるのか。河川法によって、事業主体の開発局は、道知事の意見を聞かなければならない。その手続きは、間近に迫っていると思われる。賢明な高橋はるみ知事が、今回の市民グループなどが提出した要望書に、どのように回答するか、注目に値する。

 このダムがいかに無駄かを示す例を一つ。サンルダムの建設目的の一つに「水道水の確保」が挙げられていて、名寄市と下川町が利用することになっている。名寄市で十四リットル/毎秒、下川町では一・二リットル/毎秒なのだそうな。人口が減り続け、現在でも水は余っている状況の中で、ダム建設の名目づくりのための微量の取水に対して、両自治体は負担金を支払わなければならない。その額は、名寄市の場合、建設費の〇・七%、三億七千万円に達するとされる。それは当然、住民に水道料金の値上げとして跳ね返って来る。役人たちの仕事の確保と、組織防衛のために、国の税金が湯水のごとく使われ、下々の民はなけなしの銭を吸い上げられる。この国の社会の構図が丸見えだ――。

 冊子「サンルダムへの疑問」はあさひかわ新聞(八ノ六、電話27―1577)にもあります。ご希望の方は連絡を。無料です。

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