十一日朝、自宅の前で愛犬を遊ばせながら、前夜のうちに駐車スペースに積もった雪を適当に始末して、早々に会社に向かう。会社の駐車場の除雪が待っている。その途中の車中で聞いたFMりべーる。七時からの「トゥデイズ・ターゲット」、金曜日のパーソナリティーは高田雍介氏。氏が今はまっているトルコ共和国についての話題の後、旭川市役所庁舎周辺のロードヒーティングについての話をされた。少々憤りを込めた口調で。その要約――

  「なぜ、市役所の周りの歩道だけがロードヒーティングされる必要があるのか。民間企業では、雪が降った翌朝は、社員が総出で除雪をする。ひと汗かいて、それから仕事だ。市役所には三千人の職員がいる。本庁舎をはじめ、第二、第三を合わせると、おそらく一千人以上が、あの周辺の建物で仕事をしているだろう。その人数であの歩道の面積を除雪したら、十分もかからずに終わる。環境元年が叫ばれる今、まして旭川市の財政は非常に厳しい状況にある。灯油だか、ガスだか、電気だか、熱源は知らないが、とにかく光熱費を節減し、併せて温室ガスの排出削減にもつなげるために、ロードヒーティングをやめて、職員が除雪をしてはいかがか」

 前夜、遅くまで会社で居残った社員の誰かが気を利かせてざっと雪をはねたらしく、想像していたよりも時間をかけずに除雪を終えて、市役所に向かった。高田氏が指摘する庁舎周辺のロードヒーティングには、いかほどの燃料費がかかっているのかを尋ねてみよう――。

 市の施設の維持管理を担当する総務部管理課によると、歩道部分のロードヒーティングは、土木部の担当だと言う。で、本庁舎と、隣接する市民文化会館周辺の敷地内のロードヒーティングの総延長は約三百二十メートル。熱源は、ガス。十二月一日から稼働し、三月末までの四カ月間に、昨年は約二百五十万円のガス代がかかったという。担当者は「年によって降雪量が違っても、ガス代は大きな差はないようです」と説明した。

 土木部総務課で、歩道部分のロードヒーティングについて同じ質問。緑橋通り、永隆橋通り、そして六条通りに設置されているヒーティングの総延長は約三百十メートル。昨冬は少雪ということもあり、ガス代は約二百二十万円。こちらの担当者は「その年の雪の量によって、光熱費は一~二割の差が出る」とのことだった。

 つまり、市役所の庁舎内や周辺の歩道の雪を融雪するために、ひと冬で五百万円ほどの税金が使われているということだ。また、市のほかの施設、例えば図書館とか、支所とか、公民館とか…、市職員が勤務する全ての職場の除雪は、それぞれの施設が業者に委託している。市職員は、基本的に、自分の職場の雪かきをすることはない。

 さて、首都圏や近畿圏などの限られた地域の特定の企業や巨大企業は、増収増益の好景気が続き、昨春に続き今春も賃上げを予定しているのだとか。それに引きずられて人事院は国家公務員の賃上げを勧告している。公務員給与・賞与は「民間準拠」なのだそうだ。いったい全体、どこの国の、どんな民間企業に準拠していると言うのだろう。

 経済が右肩上がりの時代は、こうして大企業のサラリーマンの年収ベースにならって国家公務員の年収が上がり、右ならえで地方の役人の給料・賞与も引き上げられ続けて来たのだろう。その長年の積み重ねが、旭川地域の民間企業で働く労働者の平均賃金と、役所のそれとの大きな格差になって残されている、ということだ。つまり、減額されることがなかった地方公務員の高給は、今や遠い過去のイケイケドンドン時代の残滓だとも言える。

 行き当たりばったり、あみだクジみたいな、綱渡りばかりの人生ではあるが、その時、その状況の中で、自らが選択した道であり、職だ。羨(うらや)んだり、妬(ねた)んだりはしない。ただ、雪が降った翌早朝、防寒着に長靴、手袋をした西川市長を先頭に、市の職員たちが市役所の周りの雪はねをする光景があってもいいと思う。本気で、市の財政を建て直そうとするならば、それを市民に目に見える形で訴えるならば、それくらいのパフォーマンスを見せなけりゃ、白け切った市民の感覚は、プラスに転じることはない――。

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