前号が出た先週の火曜日の朝、熱心に読んでいただいている読者の一人から電話をいただいた。いきなり、「今日のあなたの直言は間違っています」と言う。顔が多少いかつくて、眉間にしわなど寄ったりしているし、結構乱暴なことを言ったり書いたりしているから、誤解されている面もあろうが、私、実は、かなりの憶病者でして…。「間違っています」の一言で、冷汗がドッ。

 いわく、「確かに、市長が先頭になって市役所の職員が職場周辺の雪かきをすることで、ロードヒーティングにかかる光熱費は浮くだろうし、いま問題になっている温室効果ガスに対する市民の意識を喚起するという面では効果があるだろう。しかし、その除雪作業に駆り出される職員の時間外手当は、ロードヒーティングにかかる五百万円どころの騒ぎではない。数千万円の手当が必要になるだろう。彼らは、間違っても、仕事の前に、タダで、汗を流すなんてことはしない。だから、あなたが言わんとすることは理解できるが、間違っている。ハハハ」。

 前週の本欄に対しては、中小企業の経営者やサラリーマン、お医者さんからも、メールをいただいた。中には、「平均の年収が六百万円を超える、旭川でダントツの高給取りの集団に、職場の雪はねをしろと要求するのは無理です。貴殿も書いた通り、焼き鳥屋で焼酎の水割りを片手に人事を決める方々ですぞ。そんなお偉いお役人にジョンバを持たせようなんて、土台荒唐無稽な話ですよ」との皮肉たっぷりのご意見もあったことを報告しておく。

 牛朱別川と石狩川の合流点、旭橋の上流部、市立病院の裏の公園の周辺と言えば分かってもらえるだろうか、その川岸に繁茂する河畔林が切られようとしている。国土交通省北海道開発局旭川開発建設部旭川河川事務所は「洪水時に水の流れを阻害する恐れがある」「繁茂したヤナギなどで子どもが遊んでいても見えず、防犯上問題」などの理由から、伐採すると説明する。

 昨年末、自然保護団体・大雪と石狩の自然を守る会(寺島一男代表)に同事務所から連絡があり、同会のメンバーが立ち会って、現場で伐採する木と残す木を決めたという。その後、同会から要望書が河川事務所に提出された。「水辺の植生と河畔林は、水域生態系と陸域生態系を結ぶ重要なエコトーンであり、生物種の住処(すみか)や生育場所、あるいは移動・分散・遺伝的交流の回廊として重要な場所」などと基本的な考えを示した上で、(1)この河畔林は人工整地化が進んだ現地にあって貴重な存在で、常磐公園を含めた河畔林の連続性を考える上で重要な位置にある(2)リベライン旭川パークを訪れる人々、市立病院に入院治療している人々、旭橋を訪れる人々にとっても大切な緑の景観であり、やすらぎの対象になっている(3)大きな木は、これまで数十年以上の洪水にも堤体を壊すことなく存在しており、緊急に伐採しなければならない理由がない(4)危険防止、防犯対策が伐採理由にあるが、河畔林を受容した川との付き合い方を指導するのが基本、などと最小限の伐採に留めるよう要望している。

 河川事務所は、その要望書の意見を汲み、当初の伐採計画を見直して、「大きな木は出来るだけ残す方向で作業を進める」としている。いずれにしても、伐採作業は今週にも始まる。

 もっと、オープンにしなくてはいけない。情報をきちんと市民に伝え、議論の場を作るべきではないか。自然保護団体は、市民の代表でもなんでもない。川の環境を大きく変える計画について、一つの団体、一研究者の意見だけを聞く、いかにも横暴ではないか。断っておくが、大雪と石狩の自然を守る会の活動の大切さやその存在意義を十分理解した上で、である。要望書も指摘している通り、何十年もその場にあって、成長を続けて来た樹木が、洪水時に堤防を壊す恐れがある、などと誇大妄想的、短絡的、河川管理者を名乗る一役所の独断で切られてたまるか。

 取材に応じた担当者は、こう言った。「もし、何かあった場合、管理者である私たちが責任を問われますから」と。この自己保身の論理が、エセ川のまち、見かけだけの豊かな自然を産み続け、水辺から人を遠ざけてきた――。

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