「オレも年金をもらえる歳になったよ」と言う、ちょっと年上の知己が怒る。「どうして年金から所得税を天引きされなきゃならないんだよ。いいか、よく考えてみてくれ。オレが受け取る年金は、四十年近くあくせく働いて、使ってくれた会社が半分負担してくれて、国に預けてあった金だ。あくまでも、預けたんだ。それを返してもらうのに、どうして税金を取られなきゃならない? どう考えても合点がいかない。社会保険事務所に行って文句を言ったら、窓口の職員は『お気持ちはよく分かりますが、法律がそうなっているもので…』の答えだ。国民をコケにするのもいい加減にしろと言いたいよ」。

国会で続く論戦に「年金なんて、所詮国が胴元の詐欺みたいなものだ」と断罪する人の話を聞いたことがあるが、きっと、国とか、お上というのは、そうしたものなのだ。「愛国心」とは、命を捧げるだの、お国のために尽くすだの、そんな崇高そうな概念とは無縁の、オリンピックに代表されるスポーツの国際大会を観戦しつつ「ニッポン チャチャチャ」と騒ぐレベルまでではないのか。ポカポカ陽気、春が来たうれしさを感じつつ、そんなことを考える今日この頃。枕は、ここまで。

前号で、市職員の「お昼休み」が現行の一時間から十五分短縮されて、四十五分になることで、市役所周辺の飲食店に大きな影響を及ぼすのではないか、という問題について書いた。詳細は省くが、国家公務員に倣って、特例として設けていた「有給の十五分の休息時間」を撤廃する、というもの。現在開会中の市議会で論議が続いている。その後、関係する三つの商店街と商工会議所から「一時間の昼休み」を継続するよう要望書が西川市長に提出された。昼休みが十五分短縮されるのは「死活問題だ」と強く一時間の昼休みの継続を訴える内容だ。

職員組合の合意を取り付けて条例改正案を提出した市の姿勢は、「取り合えず議会の了承を得て、四十五分にしてみて三カ月ほど様子を見よう」ということらしい。

そもそも、公務員優遇の世論の批判を背景に国から全国の自治体に「改善」の指導があったのは昨年三月。国家公務員は、昨年七月から「十五分の有給休息」を廃止している。自治体の中には、昨年のうちに「国に右ならえ」を決めたところもあれば、旭川のように「調査研究」と称して一年間、放置して来たところもある。ということは、それほど緊急を要する案件ではないという判断だろう。

「取り合えず三カ月間様子を見る」と言うのであれば、この際、条例改正の議案を一度引っ込めて、商店街と話し合いの場を持つとか、組合と再度調整を図るとか、職員の子育て支援策を練るとか、本来の「調査研究」に取り組んではいかがか。

市が正職員に対して行ったアンケートでは、六割の職員が「四十五分で良い」と答えたという。その大きな理由の一つは、昼休みを一時間確保することで勤務時間を十五分延長すると「保育所に子どもを迎えに行く時間を変えなければならない」といった子育て世代、そして「親の介護」をしている職員の声とのことだ。先週の繰り返しになるから触れないが、そうした職員の声に応える手立ては、幾らでもあるではないか。

市役所は、三十六万人が暮らすこの旭川にあって、最高の給料水準の方たちが働く職場だ。その方たちの消費行動は、街の経済に少なからぬ影響を及ぼすことは間違いない。昼休みをたった十五分短縮することで、恐らく百軒近い飲食店の売上げを減らし、経営を直撃する。要望書にある「命取り」という言葉は、誇大でも何でもないのだ。職員組合の支援を得て当選したと評される西川市長がどんな判断をするのか、「市民の声に耳を傾ける政治」とのキャッチフレーズは本物なのかどうか、市民は注視している――。

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