家の周りの小猫の額ほどの畑の雪割りを始めた。今年は、どこに何を作ろうか。昨秋、種を蒔いたニンニクの隣はジャガイモにして、その両側はトマトにして、長ネギは二年続けて同じ場所だったから今年は…などと営農計画を楽しんでいる。

早く土の顔が見たくて、融雪剤を撒こうと考えて、ふと思い出した。先日、聞いた中国の土や農薬の話を。中国の行政機関の依頼を受けて何度も彼の地を訪れて土の成分などを調査している企業経営者の言葉。「水を浸透させる日本の土と違い、中国のほとんどの地域の土は粘土質だから水が溜まってしまう。水と一緒に散布した農薬も溜まる。中国産の輸入野菜から検出される農薬のほとんどは、生産過程で散布されたものではなく、土から水とともに吸収したものだと考えられる」「大量輸入を目的に栽培技術を教えたのは日本の商社。日本で使用が禁止された農薬を中国に持ち込んだのも彼らだ。中国野菜の農薬汚染が騒がれるたびに、日本人ってこんなに倫理観の欠如した民族なのかと、情けなくなる」。

畑に撒く融雪剤の産地が気になった。ホームセンターに並んでいる幾種類かの融雪剤には産地表示がない。農業の師匠であるプロの農家の友人に電話した。長く有機農業に取り組んでいる先進的な農業者の一人。いわく「ほとんどが国産だと思うなぁ。まぁ、撒く量を考えても、万一中国産だとしても影響はないんじゃないの?」と言いつつ、「今年は雪解けが異常に早いから、融雪剤を使わなくてもいいと思うんだけど」と冷やかされた。枕はここまで。

読者でもある友人から電話があった。「伊ノ沢スキー場が閉鎖されるという話を聞いたんだけど、本当なのかしら」と。彼女は昭和十三年生まれ。旭川の街中で生まれ育った。「小中学生の頃、スキーを担いで伊ノ沢まで歩いて行ったものよ。そんな思い出はともかく、あのスキー場って、初めてスキーをする子どもたちにとって、とても大切な施設なの。大きなスキー場でゲレンデデビューする前に、スキーを付けて、歩いたり、転んだり、なだらかな斜面をお父さんやお母さんに後ろから支えられて滑ったり、ね。そんなことが安心してできる、市街地からこんなに近いスキー場は、旭川の子どもたちにとって何よりの財産よ。子どもたちの体力低下とか、スキー離れとか言われている今だからこそ、市(まち)として、あのスキー場を守るべきだと思うの。それにね、あそこのレストハウスのラーメン、とてもおいしかったのよ。東京から遊びに来る孫たちも大好きで。なんとか、残るようにしてもらえないのかな…」。

市教育委員会生涯学習部スポーツ課の担当者に話を聞いた。経過は――

リフトの老朽化が著しく、いつ故障して止まっても不思議ではない状態だった。モーター部分を更新するだけで九千万円、ペアリフトにするには一億五千万円かかる。新たなリフトを作るとしたら、ルートを変更するのが望ましいということで、土地の取得も含めて検討していた。しかし、市の財政難ですぐに新しいリフトを設置するのは困難な状況になった。伊ノ沢スキー場は、土地も施設も旭川振興公社の所有で、平成六年から毎年百万円から三百万円を超える赤字が続いている。しかし、市民スキー場の名を冠した最後の施設ということで、市としてできるだけの支援をして行きたい。三月十日に神居住民センターで説明会を開いたが、「リフトがなければスキー場じゃない」という強硬な意見があって、私たちの「どんな形ならば存続できるか」という提案ができないまま終わってしまった。

この担当者は、「伊ノ沢スキー場の緩斜面は、幼児や初心者が練習するのには最高のスキー場。どうしても残したい。本格的なリフトは物理的、資金的に、現状としては断念せざるを得ない。次善の策として、ロープトゥーを設置したい。スキー場としては最低限のレベルかもしれないが、休息所も存続の方向で振興公社にお願いしたいと考えている。市が応分の負担をすることで最後の市民スキー場が存続できるよう、住民の皆さんと粘り強く話し合って、今後四カ月程度のうちに結論を出したい」と話した。誠意を感じさせる説明だった。

「財政難」の一言で、住民サービスの廃止や質の低下に結びつく策が次々に打ち出される。声の大きな人の意向や、議員の紐付き要望は取り上げられ、真に必要とされる施策がおざなりにされてはいないか。いま、市職員はもとより、私たち市民の踏ん張りどころ、知恵の出しどころに差し掛かっている――。

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