「津軽弁のシャンソン」と聞いて、いつもの懇親会や宴会に出かける気分とは異なり、いささかの期待を持って会場に向かったのだった。女性の奉仕団体の一つ、国際ソロプチミスト旭川(土田信子会長)が主催する、春恒例のチャリティーパーティー。ゲストは青森県弘前市でシャンソン酒場「漣」を経営し、地元で歌い続けている秋田漣さん。二十代でお店を開いて四十年近いとおっしゃるから、年齢は、まぁ…、そこそこだろう。

津軽弁を交えて歌う声量たっぷりのシャンソン。気取らず、おもねず、上品なユーモアに満ちた語りが、三百人以上の聴衆の魂を心地好く揺すぶる。耳に聞き覚えのあるシャンソン「再会」は、温かな津軽弁丸出しで会場は笑いの渦。期待を遥かに超える、素晴らしいステージだった。歌は独学だという。弘前から出たことがない、これからも地元で歌い続けたい、とも言う。岩木山、弘前城のさくら、リンゴの花…、「弘前はいいところだよ」「弘前に遊びに来てね」と、何度も我が故郷をピーアールした。

このような才能が、決して大きいとは言えない地方のまちで、地元の人たちに愛されながら輝いている。地方の時代とか、地方分権とか言うが、具体的に、こういう人がたくさんいるまちを目ざすということなんだよな、そんな思いがお腹にストンと落ちる、いい気分を味わわせていただいた。パーティーの後、「ねぇ、弘前に行ってみない?」とのお誘いを何人かから受けた。本気で弘前ツアーを計画しなきゃならないハメに陥りそうだ。枕は、ここまで。

前号、「伊ノ沢スキー場の行方」について書いた本欄に、同じような内容のご意見が三人の読者から届いた。その一人、「三姉妹の父」さんからのメールを紹介する。

――伊ノ沢スキー場のことですが、リフトの老朽化と累積赤字で閉鎖になるのではとありました。リフトの老朽化は仕方の無いことだと思いますが、赤字は解消しようとしたのでしょうか。

このようなことを私が思うのは、旭川スキー連盟のスキー教室が始まると、市民スキー場ではなく旭川スキー連盟スキー場になってしまうからです。去年も一昨年も同じことを感じていたのですが、今年の一月に子どもたちと最初に訪れた日は、たまたまスキー教室の開校日と重なっていました。我々は八時四十五分ごろスキー場に着いたのですが、このときすでに駐車場は七〇%程度埋まっておりました。スキーを履いてリフト券を購入し山頂まで着いて下を見ると、もうほぼ満車状態でした。

滑りながら見ていると、開校式が始まったのですが付き添いで来ている父母たちが児童の一・五倍はいるのです。そうです、駐車場を満車にしている車の八〇%は滑っているのではなく、付き添ってきている父母たちなのです。その間にも駐車することが出来ずに帰っていく車を何台か見ました

開校式が終わると父母たちは帰るわけではなく、ロッジの席に腰を下ろし我が物顔で占領するのです。スキーを滑りたくても駐車場が無く、寒くなってロッジに入っても座ることも出来ない状態なのです。旭川スキー連盟からいくらもらっているのかは解りませんが、これでは一般市民は利用するはずがありません。この日私たちも改めて実感し、次は別の場所に行きました。

記事にもありましたが、伊ノ沢スキー場は初心者やシーズン最初にすべる場所として最適だと思っています。しかし、このような状態では一般市民は利用するなと言われているのと同じです。スキー教室の規約がどうなっているのか知りませんが、教室が終わるまで父母が付き添っている必要があるのでしょうか。けがをした時の対応等あるかもしれませんが、教員がいるわけですし、付き添っていてもけがはします。

われわれの小さかった時もスキー教室はありましたが、同じ状況だったでしょうか。怒りを感じずにはいれません。今年で伊ノ沢スキー場が閉鎖になったら、スキー教室はどこに行くのでしょうか。来年はスキー教室と一緒にならないことを願いますし、どこのスキー場も来てほしくは無いのではないでしょうか。毎年どこかに苦情を言いたいと思っていましたので――。

スキー場を所有、運営する旭川振興公社の担当者にも話を聞いたのだが、スキー場で子どもが他のスキーヤーとぶつかってケガでもしようものなら、親とのやり取りでえらい汗をかくことになるのだそうな。この“お父さん”らが指摘する事柄は、伊ノ沢スキー場の問題だけではなく、今時の親、家族、教育…、つまり社会の有り様を、そのまま映し出しているように思える。他者との距離感を推し量る、周囲の事情を想像する、相手の立場を思いやる、そんなアンテナは一切張り巡らせない、良く言えば唯我独尊、はっきり言って鈍ちん、我がまま、自分勝手。日本は、私たちの社会は、モノだけが豊か過ぎるんだ、きっと…。

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