本紙六、七面の特集にあるように第四十一回小熊秀雄賞の受賞作が決定した。五月十日午後三時から、旭川市民文化会館小ホールで、贈呈式が開かれる。日本語ペラペラ、中原中也賞詩人の米国人、アーサー・ビナードさんの記念講演もある。私のように「詩などチンプンカンプン」という方も、ちょっと胸を反らせて「このまちの文化や芸術の香りをかいでみるか」みたいな、いささか気負った気分で、贈呈式に参加していただきたいと、心から願う。「詩などサッパリ…」だって、「武士は食わねど」的な精神的な背伸びって、結構、大事。かなり自己弁護のきらいはありますが…。

さて、一度は「廃止」と発表された小熊賞だが、市民の中から「四十回の歴史を持つ、全国の詩人たちにとってステイタスになっている賞は、旭川の財産だ」との声が上がり、新たな運営母体の発足をみて継続が実現した。その経緯から、この第四十一回は、第一回の新生・小熊賞と言ってもいいだろう。対象は〇七年一月一日から十二月三十一日までに刊行された詩集。今年一月三十一日までの募集期間に、全国から百十八点の詩集が実行委員会に届いた。過去六番目に多い応募数だった。

選考委員は、辻井喬(作家・東京)、工藤正廣(詩人、元北大文学部教授・札幌)、石本裕之(詩人、旭川高専教授・旭川)、藤井忠行(造形作家・旭川)の四氏。四月三日夕、高砂台の旅館「扇松園」の一室で、最終選考会が行われた。実行委員会の運営委員の一人として、その場で論議の一部始終を聞く機会を得た。こうした、全国規模で行われる賞の選考会はもちろん初体験。運営委員の一人が進行役となり、二時間に及んだ、静かな口調ながら、ピリピリとした緊迫感が漂う選考会の模様をリポートしてみよう。

最終選考に残ったのは二十二冊の詩集。四人それぞれが事前に五、六点を選択して来ていて、その総数は十一点。「小熊賞は、どんな詩集を求めるのか」という共通認識をテーマにした話し合いからスタートし、一時間半を要して、最終的に五点に絞り込まれた。そして、「投票で決めましょう」ということに。ここからが圧巻だった。一人が二点を選ぶという形で二度投票したが、三点が同じ得票を得て決着がつかない。三回目は、三人の選考委員の投票が二作品同数で並んだ。残る一人の委員は、なんと白票。「どうしても甲乙を付けられません」。

その時、辻井喬委員が、温和な口調で切り出した。「私が初めて賞をいただいた時、実は二人同時受賞だったんです。賞金の十円を、二人で五円ずつ分けましてね」。そして、固唾を飲んで見守る松田忠男会長はじめ実行委員会の面々に向かって、「いかがでしょう、二人に賞を贈るのは可能でしょうか」と問いかけたのだ。それで、決まりだった。

正賞は「詩人の椅子」。元道教育大旭川校教授で、彫刻家の板津邦夫さんがデザインし、旭川を代表する家具メーカー、カンディハウスの製作。「何かあった時に」と、カンディハウスの長原實会長が絶妙の勘で、たまたま二脚作ってくれていたお陰で、椅子を半分に切る必要はなくなったが、副賞の三十万円は、辻井さんの例にならい、お二人に折半してもらうことにした。

新生・小熊賞の船出に、お二人の受賞は実にめでたい。画期的。それはさておき、問題は、賞を運営する市民実行委員会の財政だ。法人会員、個人会員をもっと募らなければ、せっかく新生した賞が二年や三年で消滅してしまうことにもなりかねない。心ある皆様、詩はチンプンカンプンでありましても、どうかお力添えを。連絡は、事務局(TEL0166― 61―2731・FAX61―2937)高田まで。

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