「休日が増えて、いい思いをするのはいったい誰なんでしょうねぇ…」――振り替え休日のある夜、ほろ酔いで乗ったタクシーの運転手さんに「景気はどう?」と水を向けた私への答え。ちょっとだけおしゃべりの彼は続ける。「きっと、稼がなくても給料がもらえる人たちですよね。私らの商売、祝日や休日の日は大概ダメですから。ダメだからと言って、休んだらもっと食えなくなるし。休みを増やしたり、連休を作りたい人たちは、私らみたいな商売のことなんて、思いも付かないんでしょうね」。

道が道州制特区を活用し、十月に北海道独自の大型連休をつくる構想の検討を始めるらしい。九月の第三月曜日の「敬老の日」と十一月二十三日の「勤労感謝の日」を十月の第二月曜日の「体育の日」の後に飛び石で移動することで、「祝日に挟まれた日は休日にする」という国民祝日法なるものの規定を使い、九連休を実現するのだそうな。「観光振興と道民の余暇の充実を図る」を目的にした、この北海道だけの大型連休、名付けて「プラチナウイーク」だと。

タクシーの運転手さんだけでなく、青息吐息の中小零細企業の経営者も、そこで働く従業員も、稼がなくても給料がもらえる“人種”とは程遠い。まして、「底だ」と言われながら、さらに底に向かって落ちて行く気配の、この地域の経済状況にあってはなおさらのこと。繁華街では一カ月のほぼ三分の一の営業日を失う飲食店も出るだろう。十月初旬と言えば、農家はまだまだ繁忙期、猫の手どころか犬の足も借りたい時期だ。建築分野の業種は、降雪期を前に休日返上で現場に出なければならない季節。

バラ色のように語られる道州制の具体的な恩恵は、結局は、親方日の丸の公務員と、一握りの大企業の給料取りにもたらされる、そういうことなのか? いかにも、机の上の言葉遊びから発想された、お役人の遊び心たっぷりのアイデア。「プラチナ」が「ふらちな」に聞こえるのは私だけなの? 枕はここまで。

市役所の機構改革に伴う今回の人事には、いささか期待していた。若き西川市長が誕生してから一年半、行政経験も政治家としてのキャリアも全くない、言わば、しがらみなし、まっさらな人が、役人機構のトップの座に就いて、事実上初めて行う独自の人事評価が、どのようなものになるかと。

職員の何人かの話を聞いた。「驚くような抜てきはないが、下の者が納得できる、適材適所という感じは持てる、面もある」「菅原前市長の時代に比べて、少しはマシになったんじゃないか」「Y部長が横滑りで残ったのは…、ね。ただ、H部長やO部長は思い切った仕事をしてくれると期待している」「次長職になかなかいい人事があった。すぐには変わらないだろうけど、若い職員たちの意識が徐々に前向きになって行くと思う」「今回の人事は、機構改革に合わせて行うわけだから、職員の間で極めて評価が低いナンバー2を交替させる絶好のチャンスだったし、職員も期待していた。それが続投…。がっかりしました」。そして、一人は――

「以前、編集長が書いてくれた“焼き鳥屋人事”の張本人が副市長として残ったのは、市長選挙の時に対立候補を応援したある会派が、彼を使って影響力を維持するのが目的だろう。結局は、あちこちの会合に顔を出して、ヘラヘラ挨拶して、酒飲めればいいだけの人を、市長はナンバー2に据え置くという判断をしたということ」と断じた上で、「市長には、外部に客観的な立場から助言をしてくれる“ブレーン”がいない。信念のようなものかもしれないが、政策にしても、人事にしても、自分一人で考えて決める、という政治スタイル。その一方で、『いろんな人の顔を立てなければならない』という、妙に調整型の思考パターンを併せて持っている面もある。今回の副市長続投は、その悪しき調整型スタイルの典型じゃないか」と解説してくれた。

ところで、今回の市役所の機構改革は何を目的に行われるのだろう。厳しさを増す市財政の再建?、市民にとって使いやすい市役所?…。私たちが西川市長をトップとする市役所組織に求めるのは、至極シンプルだ。「お役所仕事からの脱却を」。その目的に照らして、五月一日から大がかりに行われる機構改革、そして人事異動がどれほどの効果を発揮するか、見ていよう――。

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