昨秋、種を蒔いたニンニクを収穫した。大きいのや、成長不良の子や、合わせて十五個。「もう少し大きくしてから」と欲張ったために収穫時期が少々遅れ、プロから見れば規格外のB品、C品がほとんどだったが、試しに下ろし金ですってみたら、あぁ、なんと香り高いニンニクちゃん。その勢いを駆って、一本だけ形になったズッキーニ入りのミートソースを作っちゃった。

今年は、これまで失敗を繰り返していたナスビの出来が思いの外良かった。三本の苗で、これまでに二十五個ほどの収穫。採りたてのヘタのイガイガの痛いこと。ナスビの平均収量の知識はないが、個人的には大豊作。キュウリはまぁまぁ。トマトは実はたくさん付けているのだが、色づきが…。

なんだか、営農日誌のようになりつつあるので、方向を変えて、簡単でメチャメチャ美味しい、漬け物のレシピを紹介する。家人が、働いていた老人ホームで入所していたオバアチャンに教えていただいて以来、我が家の食卓に度々上るようになった。この季節は、すべて自家製の野菜を使えるのが、何ともうれしい。もちろん、買った野菜でも充分に美味しいはず。

材料は、ナスビとキュウリにナンバン(共通語ではトウガラシか…)を適量、そして醤油。それだけ。ナスビとキュウリは縦に四つに切ってから、厚さ五~七ミリほどに切る。つまりコロコロとした形状。ナンバンは細い輪切り。切った三種の野菜を一緒にボールに入れて、塩少々を振りかけて、手でサッサッサッと混ぜ合わせる。そこに醤油を適当に(ヒタヒタよりも少なめ、かな)、ドボドボと加えるだけ。今の時期なら、三、四時間おけば食べられる。野菜から水が出るので、作ってから三、四日で食べ切る量にすること。こんなに簡単なのに、どうしてこんなに美味しいの…、そんな感じ。ご飯のお供に、ビールや冷酒の肴に、ぜひ一度お試しあれ。季節モノの枕は、ここまで。

今から十五年ほど前のこと。ある経営者と話した折、「住宅を建てる時には、どんな形でもいいから、煙突を一本作っておいた方がいいゾ」と助言された。いわく、「石油が焚(た)けなくなる時代が、そう遠くない将来、必ずやって来る。その時、焚くものが石炭なのか、木なのか、全く違うモノなのか、それは分からないが、とにかく、今流行(はやり)の煙突を使わないタイプの暖房機器が何の役にも立たなくなるのは間違いないから」と。その時は、家を持つ気も、財力もないから、そんなものかなぁ、程度で聞き流していたのだった。

八年ほど前、家人に息子の家族と一緒に住みたいからと懇請され、想定外の、家を建てることになった。当然、無理な借金をしてだけど。ふと、あの社長がしてくれた話を思い出し、建築を頼んだ、友人でもある建設会社の経営者に相談してみた。「煙突を作っておきたいんだけど…」と。返事は、予想通り。「やめた方がいいって。余計な金がかかるだけだから。石油がなくなって、暖房に石炭や薪(まき)を焚くような状況になんて、オレたちが生きている間は絶対にならないって。万一、そうなったら、オレが責任持って煙突作ってやるからさ、ハハハハ」。

そんな話を交わした当時、灯油の価格は一リットル五十円くらいだった。いま、百三十円。原油価格は、今秋から値下がりするだろうとの予測も耳にはするが、大抵は、灯油は秋から冬にかけて上がる傾向があるから、今冬はどれくらいの値段に落ち着くものか、それとも落ち着かないのか…。

過日、ヤマベを釣りに滝上町を抜けて、紋別市の端のタツウシ地区に行った時、酪農地帯の農家のほとんどの納屋や住宅の軒下に、薪が割りそろえて積まれているのを見た。比較的新しい住宅にも、ちゃんと煙突が立っている。山に囲まれた地域だから、薪にする材料が容易に手に入る環境なのだろうが、木を乾燥させたり、切ったり、割ったり、積んだりする手間をかけて、安易に灯油に頼らない暮らしをしているんだなぁ、と厳しい自然の中で農に従事している人たちの“哲学”を垣間見る思いだった。

さて、雪が降る前に、「石油が焚けなくなったら煙突を立ててやる」と豪語した友人に、約束を果たしてもらうべく連絡しようか――。

ご意見・ご感想お待ちしております。