「あらゆる面で格差社会に突き進むことにした張本人」だと思うし、「過疎の地域から郵便局という核が無くなる悲惨の現実を知らない人」だとも思う。が、「自民党をぶっ壊す」の表現で、官僚と政治家が馴れ合う構造に切り込んで行った、自民党の政治家の中では希有の存在であったと、私の中ではある面で評価もしていた。だが、だが、である。政界から自ら引退した後の後継に「私も普通の親バカでして」と、次男を指名したと聞いて、大いにがっかりさせられた。奇人・変人を自認したこの人も、やはり、地盤・看板・鞄に頼ってきた、日本の、普通の、政治家だったのね、と。

同族企業の社長さんや、農家の父さんが、息子や娘に家督を譲るのとはわけが違うだろう。国会議員の報酬は、当然、国から支払われる。私たちが四苦八苦して納めた税金だ。月額百三十二万八千円、プラス、期末手当六百三十五万円、文書通信交通滞在費が月額百万円(なんと非課税)、プラス、立法事務費の名目で月額六十五万円(これも非課税)。加えて、議員個人の懐に入るわけではないが、公設秘書三人の給与に約二千七百万円。一人の国会議員に年間約六千九百万円の税金が使われている計算になる。

その既得権を「息子に譲る」。小泉元総理の場合、お祖父さん、お父さんも国会議員だったから、息子で四代目。いわば、百年つづく老舗政治屋さんよ。二代つづけて政権を投げ出した二人の首相も、血統書付きの世襲議員。歌舞伎や能の役者でもあるまいし、世襲でDNAが継承される優位性なんて、何かあるのかいな…。この国の政治や選挙の仕組みや制度に、何か決定的な齟齬(そご)がある。今風に言えば、システム・エラーがあるのではないか。自民党による政権が長く続き過ぎたための制度疲労という見方もあるが、では、目の前に迫っている総選挙で民主党が政権を取ったら、世襲議員は減るか。それも心もとないが、やってみる価値はありそうな…、その程度かな。枕は、ここまで。

「失礼だと思いますが、匿名にさせてください」との書き出しで、手紙が届いた。長い手紙だったので、若干省略して紹介する――。

「今週の編集長のコラムについて、どうしても書かなければならない気持ちになりました。『お役人は、出来ない理由を考えるのが大得意なのだ』とありました。お役人と呼ばれる立場の一人として、反論したい部分と、そう言われても仕方ないのかもしれないという気持ちの両方でした。

…今回の昼休みを四十五分にして、周辺の飲食店の営業に大きな悪影響を与えてしまった件ですが、私個人としては、一時間でも、四十五分でも、どちらでも構わない。私は、基本的には弁当持参で、たまに外に食べに出る程度で、一時間あれば店で少しゆっくり新聞や週刊誌を読めます。四十五分になって、もう少しゆっくりしたいなと感じることもありますが、それでも後の仕事に影響するわけではありません。

同僚の中には、特に女性や若い職員ですが、昼休みに銀行に行くには時間的にちょっときついとか、行き付けだった店に行けなくなったという人もいますし、子どもがいる人は、昼休みが短くても、早く帰宅できなければ困るという子育て世代の切実な声も聞きます。コラムにあったように、職員のアンケートでは、四十五分でいいという人が六割、一時間に戻した方がいいという人が四割という結果でしたが、その中には僕のように『どちらでも構わない』という人が、相当数いるのではないかと思われます。

…『ある意味で政治的な意味合いを持つ判断を要求される』と編集長は書かれていましたが、それは役所の外の人の視点であり、私は『政治的な判断』ではなく、職員に向けた意思表示として、市長は『飲食店に多大な影響が出ているから、昼休みは一時間に戻そう。その結果起きる様々な問題を想定して、どんな方法がいいのか、それを職員のみなさん自身が考えなさい』と指示すべきなのだと思います。上司が『やれ』と言えば、私たちはやるんです。情けない話に聞こえるかもしれませんが、『市民の目線』とか言いますが、上司に逆らってまで何か新しい事業に取り組むということは、絶対にあり得ません。

…当たり前ですが、役所の最高の上司は市長です。その最高の上司が、部下である職員に対して本当に市民の目線で仕事をさせようとしているのか、それを職員は見ています。市長は清新や若さをアピールして市長に当選したのですから、人事面を含めてもっと思い切った市政運営をしていただきたい。部下としてそう感じています。

追伸 以前、編集長の直言に副市長の××の焼き鳥屋人事のことが書かれていましたが、気が合う同僚と拍手喝采、居酒屋で乾杯しましたよ。ますますの健筆を期待しています」

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