まぁ、いつもの飲み仲間のうちの何人かは、同調するとは予想していた。それも、さほどの蓄えのないヤツに限って、「そんな、こちらから求めてもいない、お恵みみたいな金、受け取れるかってんだ」などと、宵越しの銭は持たねぇ江戸っ子気取りで、「おめえに任す」と言ってくるだろう、と。だが、今は病床にある、人生の大先輩の女性に「もし、本当に国から給付金なるものが頂けたら、小熊秀雄賞の実行委員会に寄付するからね」と笑顔を添えての申し出を受けようとは思わなかった。へそ曲がりの私のごとき、懐はいつも寂しいけれど、片意地を張ることをよしとする人って、少なからずいるんだ。

きっと、日本全国津々浦々に、「一万二千円なり、二万円なりがお上から下されたら、お役に立ててくれる、何か、どこか、そういう所に寄付しよう」と思案している方がいらっしゃるに違いない。そう思わせてくれる、「おれも、お前の寄付の話に乗るからな」的な周囲の反応。先週の本欄を書いてから、なんだか、山本周五郎の短編、江戸情話の世界を味わっているような、そんな気がしている。枕は、ここまで。

マスコミの麻生首相叩きが、このところ急にすさまじくなった。都から遠く離れた北のまちで暮らしている者には、どうも、「踏襲」だの「未曾有」だの「頻繁」だのの漢字が読めないという事実が判明したあたりから、その叩き方がやにわに激しさを増したように見える。つい二カ月前、五人が立候補して騒ぎ立てた自民党総裁選の折、「国民的人気」と持ち上げてしまった懺悔のごとく、一斉に麻生バッシングである。基本的に自民党びいきのニュアンスを隠さない読売新聞でさえ、「首相としての資質を疑う声までささやかれ始めた」(二十一日付朝刊)と書く。

政治の世界は“一寸先は闇”とも言われるようだから、今後の展開を読む術もないが、二代続けて政権を放り出した自民党の今後を予測してみよう。直に取材できる立場じゃないし、あくまでも、主に新聞報道を参考にしての、まぁ占いのようなものと考えていただきたい。

各紙そろって「求心力低下」と報じる麻生総理の後継は誰か。二カ月前、現総理と選挙戦を戦った四人、石原、小池、石破、与謝野の四人は、圏外だろう。四人のうちの誰が総裁として来たる衆院選を戦っても、自民党は大敗する。彼らは、麻生総理誕生の舞台の前座を務めたダミーだった。総裁選を出来るだけ賑やかに演出し、その勢いで、新総裁のボロが出ない、漢字が読めない男なんて露見しないうちに、支持率がご祝儀相場を保っている間に、バタバタと総選挙をやってしまえばどうにかなるだろう、と浅はかな読みをした体制の側にいた人たちだから。

多分、おばちゃんに絶大な人気を誇ると言われる杉村太蔵君が選挙の顔となったとしてもダメ、男では誰がなっても惨敗だろう。ここは、女性を総裁に据える以外に自民党を救う道はない。郵政民営化法案に反対、造反し、当時の小泉総理に刺客を送られながら無所属で当選、その後、詫びを入れて復党した、あの野田聖子。内閣府特命担当大臣(科学技術政策・食品安全)のほかに、消費者行政推進担当大臣、宇宙開発担当大臣でもあるそうな。野田総裁を担いで戦う以外に、自民党が政権を維持できる術はない、と読む。

その理由を少々。一貫して自民党を支持して来たという市内で製造業を営む六十歳代の男性の弁。「私のような、いわばカチカチの自民支持者でも、ここまでダメなら、一度違う党に政権を譲り渡して、やらせてみればいい、そう思うもの」。この方とは、夜の街で、時々出会って、話を交わすことがある。お酒もたしなむし、多分、女性もお好き。「一度違う党に…」と言ってはいるが、もし自民党が女性総裁を担いで選挙に打って出れば、「もう一回、女の総理総裁がどんな政治をするのか、男とどう違うのか、見てやるか」と思い直すこともあり得る、のではないか、とも思える。

つまり、自民・公明の与党が下野しないためには、それくらいの奇策にかけるしかない、それくらいの末期症状に陥っていると推察するが、いかがか。肝心の解散の時期は、皆目見当もつかないのが悔しいけれど――。

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