年賀状と同じで、お返しをしなければ年々、届く数が減る。バレンタインデーのチョコレートのこと。今年は、女性社員が、義理と習慣でくれた一個だけ。こんな時、自分がいかに矛盾に満ちた、情けない、典型的な付和雷同型の人格であることかわかる。つまり、何となく寂しいのだ。それなら、定められた日に、クッキーだのケーキだの、律儀にお返しすればいいものを…。

何年か前のこの時季、明らかに義理チョコとは一線を画す、豪華なチョコレートをいただいて、家に持って帰ったことがある。家人は、昔からこうしたお遊びにとんと興味がない性格。だから、別に関心は引かないと思ったのだが、ちょっと様子が違った。そのチョコを前に、一瞬、不快そうな所作を見せたのだ。所帯を持って三十五年、すでに愛とか恋とか、そのレベルは超越しているし、「うちの亭主は外で何やってるもんだか」と信頼感もかなり希薄になっているはず。多分、本人も無意識の挙動だったのだろうが、久しぶりに、家人との間に、渡りたくても渡れない、男と女の河を見たような気がして、雄(オス)として少し怖かった。

お菓子屋さんの戦略に乗せられていると分かっていても、最近は女性が女性に贈る「友チョコ」だの、男性が女性にプレゼントする「逆チョコ」だの、様々な形でチョコが行き交っているのだそうな。インターネットや携帯電話で、顔が見えない、触れ合わない、バーチャルな人間関係に慣れてしまった現代人にとっては、たかがチョコが、生の人間関係のあれやこれやの感覚を蘇らせる道具に使われるのなら、まっ、いいのかな。そんな気がした二月十四日、土曜日でありました。我ながら、気恥ずかしいくらい軟派な枕は、ここまで。

「定額給付金をもらったら、旭川店が閉鎖しないように、丸井今井で買い物をしてもらうように呼び掛ける」――ある市議の提案である。あらら、そう来るか…。

十四、十五日付の新聞各紙に全面広告が載った。「あなたが参加する、2兆円の景気対策」の見出し。大きく「2/75」とあって、「あなたに届く、75兆円の景気対策」。紙面の左下の隅に、なんだか可哀想なくらい小さく、麻生総理大臣が得意の、テーブルか机に両肘をついている、お行儀の良くない姿の上半身が添えられている。広告主は、「やりぬく責任 自民党」。

息子に議席を禅譲して引退する元総理が、どんな思惑で言ったか知らないが、「定額給付金は(衆院の)三分の二を使ってでも成立させねばならない法案だとは思わない」。何を今さら、の感は否めないが、二兆円のバラ撒きに納得できない国民の多数の声を代弁しているのは間違いないだろう。一人当り一万二千円だか、二万円だか、そんなアブク銭を恵まれたって…、もっと将来を見据えた使い道があるじゃないか、と。

会社の記者たちと、「やりぬく自民党」の全面広告は、何を言いたいのだろう、という話になった。記者の一人は、「二兆円の現ナマをくれてやるんだゾと、政権党の力をアピールしていると読んだ」と言う。私は逆で、「バラ撒きと批判されるけど、バラ撒くのは総額七十五兆円の景気対策のうちの、たった二兆円なんですから、たいしたバラ撒きじゃないのよ、という意味の2/75じゃないかな」と受け取った。

この際、潔く、定額給付金を撤回し、その分をそっくり地方自治体に景気対策費として分配したらいかがか。その地、その地に見合った施策があるんだから。次々に打ち出される景気対策も、国のため、国民のためと言いながら、どうも、総理本人の支持率を上げるのが最大の目的であるかのように映って仕方がない。与党の多くの国会議員の本音も「これほど不人気な麻生総裁では選挙は戦えない」だろう。出来る限り早く総選挙を実施すべきだ。その結果、自民党が下野する結果になるのか、政界再編のガラガラポンが起きるのか。いずれにしろ、選挙民の信を問うのが、国民心理の面からも一番の景気対策になるんじゃないか――。

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