前週のつづき。市内の中小企業の経営者からのメールを。市の厳しい財政状況の下、市職員の給与の「役職加算」は止めるべき、という本紙の主張に対する反論である。

――必要な仕事をお願いし、その上で、結果的に財政運営に支障をきたすようであれば、一律その支給の仕組みを無能者に合わせるかのごとくカットするようなやり方ではなく、むしろ数の問題で議論しなくてはいけないのではないでしょうか? ボクの目には管理職のポストに就きながら、その仕事をしていない管理職ってけっこう多いように思えるし、その前に市議会議員の数は三十五万人のまちの行政運営のために三千人程度の票を得ることで当選できるなんてハードルが低すぎるように思うし、そのせいか仕事をしているように見えない議員が多すぎるように思いますが。

官民の給与格差の問題は決して役所が「高給」なわけではなく、私たち地域の民間企業が安すぎるのです。いくら地方都市とは言え、商工会議所のデータをそのまま受け止めるのであれば、四十歳の大卒社員の年収が三百六十四万円は、あまりに安い。まあ、ウチの会社も似たようなもんですから決して大きな口はたたけませんが、この年収では奥さんが仕事に出ていたとしても、子どもの教育のことを考えると、地域を元気付ける不動産や大型耐久消費財の購入にお金はなかなか回らないでしょう。

地域の中小企業の給与水準が厳しいレベルにあるのは、私たちの経済活動の付加価値率が低すぎることに他ならず、これまでの官公需中心の経済から民需が中心となった健全な経済へのできるだけ早い転換が必要になると思います。また、旭川では多くないかもしれませんが、大手メーカーの下請けでいるとどうしても今回のような経済危機でのツケは下請けである中小企業に回ってきます。さらには大手の組合活動などによって、自社の正規職員の既得権保護を優先させるために、ますます非正規社員や下請けに厳しい要求が突きつけられることになるのです。

先月(かな?)の直言にあったように、こうした状況でも大手に負けない経営をしている中小企業は全国にたくさんあるし、そうした企業を見習ってまずは経営者自らがもっともっと勉強し努力する必要があるのではないでしょうか? その上でこの地域の資産をきちんと分析、把握し、そうした特性を活かした商品・サービスの開発を進め、地域の中小企業振興を進めなければこの問題は解決することはないのです。たしかに経済環境は厳しく、そう簡単に民間の給与水準が改善することは難しいでしょうが。

いま、行政に求めることは、私たち中小企業者の自主的努力のバックボーンとなり、新しい企業家が登場し、努力し、伸びる会社を支援する地域独自の中小企業振興基本条例のような法的環境を整備するなど、これまでの恒常的な財政出動がなければ経済を保つことができないような支援方法ではなく、新しい視点の中小企業支援のあり方を検討、整備することです。

結局のところ、公務員に今の時代にふさわしい仕事をきちんとしてもらえるかどうかは、その行政運営の長である首長のビジョンとリーダーシップにかかっているわけで、私たちはこの町のトップに本当にふさわしい人を選ばなくてはいけませんね――

「旭川地域における官民の給与の格差は、官が高すぎるのではなく、民が安すぎる」という指摘は、確かにそうなのだろう。前週の市職員の給与削減要求は「優秀な職員のモチベーションを削ぐ」という論理も一理あると思う。ただ、その優秀であるはずの職員集団の力を十二分に発揮して、私達が税金を払うという形で役人に付託している行政サービスを、私達市民が、相応に、十分に、受け取っているのか、ということだ。氏が最後に述べているように、トップのビジョンとリーダーシップ、それに尽きるのだろう。そして、現状は、あぁ…。

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