馬謖(ばしょく)さんも草葉の陰で憤慨しているのではないか。鴻池祥肇(よしただ)・官房副長官の辞意を受け入れるかどうかの判断を躊躇する麻生首相に対して、河村官房長官が「泣いて馬謖を切ることも重要だ」と説得したという。

語源由来辞典の引用で、この諺(ことわざ)の意味を復習すると「馬謖は、中国の三国時代の蜀(しょく)の武将で、諸葛亮(しょかつりょう)の信任を受けて参軍した人物である。馬謖は街亭の戦いで命令に背き、戦略を誤って魏軍に惨敗した。諸葛亮にとって馬謖は愛弟子であるが、軍律の遵守を最優先させるため、命令に背いた馬謖を斬罪に処し涙した」とある。

鴻池官房副長官は、命令に背いたわけではない。週刊新潮の記事によると、政府・官邸が新型インフルエンザの対策にてんてこ舞いしている渦中、愛人と二泊三日のお忍びゴルフに熱海に出かけ、その際、国会議員に対して「職務に資するため」与えられているJRの無料パスを使ったのだそうだ。この方、小泉内閣の防災担当大臣だった〇三年、中学生による男児誘拐殺人事件について「加害者の親は市中引き回しの上、打ち首にすればいい」と発言し、物議を醸したのを記憶している読者もおられるだろう。

麻生首相の盟友であるらしいこのオジサンの、記者に対する弁解が笑える。「ボク自身、役職を追い求めたり権力にしがみつくのは好きやない。麻生さんから官房副長官やれ言われた時も、すぐ解散すると思てたくらいやし。(前回に浮上した女性問題のときは)麻生さんからは何も言われてません。まあ、自分だっていっぱいしてるんやし。官房長官にはね、もう私、罷免してくれまっかて言うたんです。そしたら、そういうことは却っていかんと言われまして。ただ、今回はどうなるか…」。つまり、「自分だっていっぱいしてる」と暴露された麻生首相が、泣いて絶倫オジサンを切ったという構図。

この程度の男を政府の要職に就かせる首相の神経が理解不能だ。このザマじゃ、官僚政治の打破なんて絵空事であるという事実がはっきりと分かる。それにしても、六十八歳にして、女性とスキャンダルを巻き起こせる男性としての能力には敬服せざるを得ませんなぁ。こちとら、オジサンよりも十歳も年下なのに、このところとみに、戦意はあれど戦力が…、でして、ハハハ。枕はここまで。

石狩川の左岸、新橋と旭西橋の間の堤防上の道路に、突如、ゴミ箱が出現したのは連休明けの七日。朝、犬の散歩に行った娘が、「あんな所にゴミ箱なんて、どういうつもりなのかしら」と教えてくれて分かった。確認してみると、木製の立派なゴミ箱。燃やせるゴミ、燃やせないゴミ、ビン・缶の三種に分別して捨てられるようになっている。朝、犬の散歩の折に出会う「犬友達」のお母さんたちも、「公園にだってゴミ箱がない時代、自分が出すゴミは自分が責任を持って始末するという時代にねぇ」と首を傾げた。

開発局の河川事務所に取材すると、この堤防一帯で光ケーブルの敷設工事があり、その工事の受注業者が設置したという説明。「私どもが発注する全ての工事の現場で、イメージアップのために五項目の提案をするよう業者に求めている」のだそうだ。その提案の一つが、ゴミ箱の設置だった。「この辺は、ゴミを捨てる人が少なくないし、河川パトロールに出た巡視員が大量のゴミを拾い集めてくる状況もあり、業者の提案を了解した」という。

私は、ゴミを捨てないようアピールするならともかく、こんな場所にゴミ箱を置くなど、時代錯誤だし、何よりゴミについて自己責任を求める風潮に逆行する、景観上も良くないと主張したのだが、「良かれと思って、善意でやったこと。景観を考慮して木製にした。しばらく様子を見ようと思う」と、こちらが指摘する「全く必要のない、余計なおせっかい」という感覚が理解できない様子だった。

ところが、その翌朝、ゴミ箱は設置した業者によって撤去された。犬の散歩で会った女性は、「ゴミ箱、なくなったのね」と不可解な表情だった。

お役人の「イメージアップのため」などというわけの分からない感覚で、「利用者の利便性」だの、「景観上、木製に」だの、幼稚で短絡的な発想で私たちの税金がいかに無駄に使われていることか。お上の求めに応じて、それなりの知恵を絞り、お金も労力もかけて設置した受注業者の弱い立場を思いつつも、なんだか腹立たしい気持ちにさせられた堤防ゴミ箱事件だった。

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