「近ごろのコラム、冗漫に流れ過ぎるんじゃないか。『直言』らしく、ストレートに書いたほうがいいよ」と複数の先輩諸氏から助言を受けた。心当たりがないわけではないから、その言葉がなおのこと胸に突き刺さる。今週は、冗漫に流れることを戒めつつ、枕抜きでいく。

少し前のことだが、読者から「旭川市の役職加算の事が書かれていましたが」の書き出しで手紙が届いた。「一市民より」とあるが、字の姿から察するに差出人は、ある程度の年齢の女性だと思われる。手紙は、こう続く。

――市職員の諸手当等せめて国家公務員並にすべきだと思うのは、当り得ない者の“さもしい思い”なのでしょうか。例えば、住宅手当です。家を新築したり、購入すれば、退職まで手当てが月九千円。しかも、五年間はそれに千五百円加算されます。

大阪ではその半分の四千五百円でも、三千円に減額される(された?)といいます。国家公務員は手当ては五年間だけ、月に二千五百円。旭川市の職員はうらやましい限りです――

今月二日付北海道新聞四面の片隅に、「国家公務員、持ち家の住居手当廃止」の見出しで小さな記事があった。

――人事院は、国家公務員の住居手当のうち、新築や購入から五年以内の持ち家に住んでいる職員を対象に、年間3万円(月額2500円)を支給している手当てを廃止するよう、8月上旬にも内閣と国会に勧告することを決めた。

人事院は「民間では自宅の維持管理費の補助を目的とする手当ては、ほとんどない」などとして、昨年8月の勧告でも「廃止の検討を進める」としていた。(中略)国家公務員の住居手当はほかに、賃貸住宅の居住者にも家賃補助を目的に月額最高2万7千円などが支給されているが、賃貸住宅対象の手当は存続する――

市総務部人事課職員厚生担当に取材した。

住宅手当には二種類あるとのこと。アパートやマンション、一戸建て住宅を賃貸している職員は、国家公務員と同額の月額二万七千円を上限に、家賃によって手当てが支給されている。少々複雑な計算式があるのだが、例えば、五万円の家賃を払っている職員の場合、ちょうど上限の二万七千円の支給を受ける。家賃が四万円の場合は、二万二千円。

もう一つは、一戸建てなり分譲マンションなりを購入したり、住宅を新築した職員の場合。月額九千円の手当てに加えて、五年間は千五百円を加算して支給する。年間十二万六千円。読者からの手紙の通りである。

担当者は次のような説明をした。「国家公務員の場合は、転勤が広域にわたる事情から、自己所有の住宅は少ないと思われる。また、そうした事情で、公宅が整備され、その家賃を低く抑えることで住宅手当にあたる補助をしている。」

旭川市の職員三千人余りのうち、住宅手当を受給しているのは、約二千二百人。その総額は三億一千万円余りだという。

この担当者は、「人事院の勧告にしたがって国家公務員の住宅手当が廃止になれば、地方公務員もそうなるでしょうね。ただ、旭川市を含めて地方自治体には公宅制度がありませんから、そうしたことが配慮されるかどうか…」と話した。三億円あれば、何ができる…、いや言うまい。市の財政が火の車だという事実は周知のことだから。

三十日に投開票される総選挙の争点の一つは、地方分権だとされる。端的に言えば、国が握っている権限と財源を地方に移譲し、地方のことは地方が主体性をもって決める、国に口出しはさせない、ということだ。手法はどうあれ、マスコミ受けする宮崎県や大阪府の知事らのお陰で、次の政権を争う自民党も民主党も、地方の首長たちの声を無視できない状況が形作られた。

地方の時代、地方分権、地方からの発進…、美しい言葉が並ぶ。だがだが、このまちのザマを見るがいい。たかが職員の住宅手当でさえ、人事院の勧告を受けた国の役人に右ならえ、である。主体性?、独自性?、地方の特性を生かした施策?、そんなものが具現化する可能性がどこにあると言うんだい。

民主党が政権を奪ったとしたら、いや、自民党が巻き返して公明党との連立政権を維持するとしても、かなりのスピードで、相当のボリュームの権限と財源が地方自治体に移されるのは間違いない。そのとき、この三十五万都市の首長と官吏たちは、なににならって、どこを真似て、まちづくりを進める腹づもりなのだろう。想像するだに、寒気がする――。

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