千葉県の森田健作知事が、成田空港にカジノをつくる構想を発表したんだと。「国際空港としての魅力アップ」だとか、「羽田との差別化」だとか、何やらカッコいい理由を並べているが、要は「博打の胴元になって寺銭を稼ごうぜ」ということだ。「外国人の旅行者に限ってのカジノ」だと。日本には、カジノなどなくても、全国津々浦々に、パチンコ・パチスロ店という立派な博打場があるじゃないの。その数、一万五千だか一万六千店。市町村数の十倍もの、お上公認の博打場だぜ。外国人をそこに導くシステムの構築を研究した方が、よほど簡便じゃないのかね。東京や神奈川、沖縄でもカジノ計画があるそうだ。射幸心を当てにして経済効果を期待するって、限りなくゲスだと思いますけど。枕はここまで。

 四人の仲間と飲んで、いささか酔って仕上げの居酒屋に入った。小上がりに陣取ると、隣の席に女性の二人連れ。彼女達の子どもなのだろう、小学校一年生か二年生の男子と、三、四歳の女子、歩き始めたばかりの性別不明の幼児の三人がチョロチョロしている。テーブルの上には、彼女たちの生ビールのジョッキ、子ども三人のコーラと「ジューチュ」。そして、食べ散らかした肴やらおにぎり。午後十一時過ぎのことである。

 「ほら、おにぎり残ってるじゃない」とか、「ザンギ、もう食べないなら、お母さん食べちゃうよ、いいのかい」という、母子の会話が聞こえる。そのうちに、兄妹がテーブルの下に潜ったり、追いかけっこをしたりの状態になった。私の性格を知っている仲間の一人が、「やめとけよ」と釘を刺したし、店の経営者も知らない訳じゃないから、黙って店を出ることにした。

 子どもが騒々しかったからカチンと来たのではない。子どもが哀れだったのだ。夜、子どもは、眠らなければいけない。昼間、精一杯動き回って、お腹を空かせて、決まった時間にご飯を食べて、夜、コックンと寝る。そして朝、決まった時間に起きて、ご飯を食べて…。医学的なことは分からないが、親の都合で夜中まで眠らせてもらえない子どもの成長に影響が出るのは、誰が考えても当然のことだろう。

 「工藤さんなんか、あの店に夜に行ったら、ひっくり返っちゃいますよ、絶対。小さな子どもを連れて、オレたちとは別な世界に生きてると思えるような服装をした若いカップル、きっと夫婦なんだろうけど、ウジャウジャいますから。店の中を子どもが走り回ったりして。夜中の一時、二時にですよ。日本は終わるなって、マジで思いますね」。何かの折に二十四時間営業の大型店が話題にのぼった折の友人の話である。

 深夜、親に連れられた、明らかに就学前の幼い子どもを見かけるようになったのは、いつの頃からだったろう。近ごろは、夜、子どもを連れてカラオケボックスに行く、若い親が珍しくないのだそうだ。閉じられた空間だから、周囲に気を遣わなくてもよいという理由だという。先に書いた居酒屋の経営者も、商売になるからと喜んで幼い子ども連れを受け入れているのではない。「断れないんですよねぇ。十一時以降、小学生はダメというのは知ってるけど、それ以下の小さな子は対象外なんでしょう。小学生だけ入店禁止とは言えないもの…」というのが実態だ。

 北海道青少年健全育成条例の第三十五条に、「深夜外出の制限」という一項がある。「保護者は、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜にその監護する青少年を外出させないように努めなければならない」。この条例が言う「青少年」とは、「学齢の始期から十八歳に達するまでの者」。つまり、小学生以下の幼児は対象外。そして、「深夜」とは、「午後十一時から翌日午前四時までの間」を指す。ちなみに、罰則があり、違反した者は、三十万円以下の罰金。

 法律で規制すべきだと思う。旭川市が、独自の条例を作ればいい。夜、十一時以降、十八歳以下の子どもは、外出禁止。たとえ親同伴でも飲食店やスーパーマーケット、カラオケボックス、コンビニ、インターネットカフェは、出入りしてはならない、と。十一時というのを十時にしたって、九時にしたっていい。夜、子どもが外にいる必要はない。子どもは、よく眠って、育つのが仕事だ。そこにアホな親の個人の自由が入り込む余地なんてあるものか。

 規制緩和の潮流が、本来緩和してはいけない分野に浸透し、野放図な「規範緩和」を助長していると思えてならない。「子どもは社会が育てる」として、二万六千円の子ども手当てを支給するのだ。「社会」として、「夜は、子どもは寝かせること」を強制していいはずではないか。

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