ある全国紙の関西版に五月に毎日載る、ある連載を読みたくて、その新聞社の大阪本社に電話した。声と口調から推して、明らかに中年以上の、勘の良くない男二人を経由して、ようやく関西弁のちょっとテキパキした女性につながった。この時点で、当方の印象としては、「この会社、新聞を購読してもらいたくないと言ってるような…」。そして、その女性が言うには、「契約は三カ月以上なんですよ」。さらに、書類を送るから、そこに書いてある振込先に、三カ月分の購読料と郵送料、合わせて一万三千ナニガシかのお金を振り込んだのを確認した後に郵送する、と言う。

 そのときは、新聞としては好みのタイプではあるし、何人かの知己もいるし、まぁ、いいかぁと気を取り直したのだが、振り込んで一週間待っても、届かない。再び電話して聞けば、ゴールデンウイークが挟まったとか、発送するのは別部門だとか、言い訳の山。おまけに、最初の電話で、「五月の紙面に掲載される連載を読みたいので」と伝えてあるにもかかわらず、振込みを確認した日の新聞から三カ月の新聞を送る、とのたまう。

 考えてみればですよ、あちらは、三カ月の契約なのに途中で止められたら損するし、代金の不払いがあっても飛行機を使って集金に来たら赤字になる、との事情や計算の上で、三カ月分前払いの振込みを確認した上でブツを送る、と言っているのだろう。じゃあね、お宅の会社が万が一、購読途中の三カ月以内に倒産したら、私が支払った購読料と郵送料は、どうなるのよ。売り物が「言論」だといったって、しょせんは商売じゃねえか。読者あっての新聞社だろうが。てめえの勝手ばかり押し付けるような商売するんじゃねえぞー。やめよう、この手の話は、必ずUターンして我が社、我が身に降りかかる。大と零細の差こそあれ、偶然、同業種だし…。枕は、ここまで。

 四月に小欄で、国から道を経由して旭川市にやって来たお金が、緊急雇用対策として使われ、新しい観光マップが作られた、という事例を引き合いに「市職員の正しい仕事を考える」のタイトルで持論を述べさせてもらった。そのサワリをちょっと復習すると。

 ――国から道を通じて下りて来た一億円近い緊急雇用対策向けのお金を、幾つかの事業に振り分けて、期限付きの雇用を生み出したとしても、その事業が終了した時点で解雇となることが明白であるのを、市は意に介さなくて良いものか、ということだ。企業の側は、せっかく雇って、短い期間とはいえ共に仕事をした社員を切りたくはないはずだ。全員とは言わないが、その中の何人か、社に貢献できると判断した人を継続して雇用できるサポート制度のようなものを市の独自の施策として打ち出せないものか――

 このテーマで二回書いたのだが、市職員OBの方を含め、何人かの読者からメールやら電話をいただいた。それで、もう少し調べる気になった。この雇用対策で、どれほどのお金がばら撒かれたのか、と。

 旭川市では、平成二十一年度には、私が書いた「観光マップ」を含め、市が民間企業に委託した四十二事業に約二億三千万円が投じられた。各事業を行なうために採用された新規雇用者は合計百九十五人。その方たちが、事業が終了した後、継続して雇用されているかどうかの調査結果は、取材した時点ではまだ出ていない。だが、所管する経済観光部の担当者は、「委託事業の終了と同時に雇用も終了している場合が多い」と言う。「あくまでも緊急の事業で、継続雇用のしばりはありませんから」と。

 国全体で見れば、平成二十年度と二十一年度に全国の自治体で四千五百億円が、この手の緊急雇用対策事業に使われた。データを持ち合わせていないが、その限りなく百%に近い被雇用者が、旭川市の場合と同様に、事業の終了と同時に解雇されたと考えていいだろう。三カ月でも、六カ月でも、無職の人が職を得られるのだからいいじゃないか、というご意見もあろう。だが、文字通りの一時しのぎ、その場限りの雇用を“でっち上げる”ために、費用対効果の計算もないまま、私たちの税金が、これほどの規模で垂れ流しにされていいのだろうか。

 この緊急対策と同時に、三年間にわたって実施する「ふるさと雇用再生特別対策事業」にも平成二十一年度は十一事業、一億千五百万円が使われている。補助金の支出が終了した後も、雇用の継続が期待される事業が対象なのだそうだ。こちらも、市の職員が知恵を絞って“創出”した「仕事」。新規に三十一人が雇用された。今年度は、一事業増えて十二事業に二億六千万円余りが予算化されている。その増えた一つが「公募型プロポーザル」。市の職員が提案するではなく、民間の企業・団体に事業そのものを提案してもらおうという試みだ。

 早い話がですよ、役所しか知らない職員がですよ、雇用を生み出すための仕事を考え出すなんて、かなり荷が重いんじゃありませんかね。倒産はもちろん、給料やボーナスが減る心配さえしたことのない方々が、臨機応変に市場のニーズをキャッチしたり、それこそ費用対効果を計算したり、いわゆる商売のカンを働かせたり、そんな芸当ができるとは考えられませんなぁ。巨費を使って書類の山を築くのが関の山じゃないのかね。

 お役人の仕事は、四月にも書いたけれど、国やまちのお金が、正当な使われ方をしているか、税金を投じた結果、その効果はどうだったかを検証し、民間に正確な情報を提供しながら、適確なニーズとアイデアを吸い上げるシステムを構築すること、それに尽きると思いますが。

 今回の公募型プロポーザルで、民間からどんなアイデアや事業が出てくるか、注目している。

ご意見・ご感想お待ちしております。