前週の小欄「市職員がネットで買い物やめたら…」には、奇しくも同じ趣旨の厳しい反論のメールを二通いただいた。毎週冷や汗もので書いている小欄を真摯に、丁寧に読み、しかも時間を割いて返信をいただける身を、いささか気恥ずかしくもあり、少々誇らしくも思う。「その通りです」とうなずきながら読ませていただいた。お二人とも旭川のある面の実態を指摘されていて、その処方箋を考える方向を指し示している。二通ともお名前を記してあったが、名は伏せさせていただき、サワリを紹介する。

 ――ネット時代を否定しても、意味はありません。ネットでは買えない物を如何に消費者に提供するか、がポイントなのではないでしょうか? 旭川の実店舗(特に買物公園)を見ていると、その点の「努力不足」を痛感します。自分で努力をせずに、「規制」で潤おうなどと考えるのは、愚の骨頂です。

「たかが数百円、千円」ですと! 下請け中小企業が、数円・数十円単位のコスト削減に血道を上げてさせられている現在、何を寝ぼけたことを言っているのですか。だから、旭川の商売人は、消費者に見捨てられて没落するのです。努力・工夫無き者は去れ!、が「商売」の鉄則です。

 旭川の商店も努力をしている、と反論されるなら、その証拠(努力の具体的態様)を示して下さい。もちろん、「結果に結びつかないような努力」など、への突っ張りにもなりません。

いつもは結構腑に落ちることが多いのですが、今回はカチンと来ましたので、メールさせて頂きました。

 もうお一方。

 ――地産地消、非常に良いことです。市役所職員に地域のためを考えて、可能な限り市内で買物をしろ、というのも意識の点では良い考えだとは思います。しかし、「市内で買えないから」、札幌で、インターネットで買う、という人が大半では無いでしょうか。好きでインターネット購入ばかりしている人は少数派でしょう。

 日用品や食料品の大半は市内のスーパーで購入していると思います。お取り寄せスイーツという言葉もありますが、それは年に数回、せいぜい月一回の贅沢では無いでしょうか。大半の市民、市職員は市内の菓子店でスイーツの購入をしているでしょう。

 では編集長は、一体何を指して、インターネット購入を止めろと言うのでしょうか。衣料品についてでしょうか。家電製品についてでしょうか。

 正直に申し上げて、この両者については、旭川市内に若者のニーズにあった商品が、豊富にはないからである、と言わざるを得ないのではないでしょうか。

 買物公園通りに点在する洋服店は、特定のファッションに向いている傾向があり、一般的な若者(二~三十代)のニーズを必ずしも満たしていません。それでも、「イ○ン等の大型店で買物をするな」「インターネット購入は控えろ」というのでは、市役所職員の若者たちは納得しないでしょう。

 家電製品についても、ヤ○ダ電機などの大型家電量販店での購入もイ○ン同様に控え、インターネット購入やジャパ○ット等テレビショッピングも控えろというのであれば、定価かせいぜい一割引程度の製品を、市内の小売店で買わなければならないのでしょうか。

 ならば、こうしたことを逆手にとって、市中心部の商店街が、インターネットに出店すれば良いのではないでしょうか。商品の仕入れや流通等の問題もあるかもしれませんが、積極的に行うべきです。市職員のインターネット購入を止めさせるのではなく、です。

 正直言って、今の買物公園には、満足に家族で食事を取れるお店がありません。あるのは居酒屋とラーメン屋とファストフード店だけです。一部、老舗のトンカツ屋さんや喫茶店などはありますが、必ずしも若者向けではありません。スイーツを提供してくれるお店(ケーキ屋さんなど)もほとんどありません。ちょっと甘いモノが食べたいから休憩しようか、となってもファストフード店か、外資のカフェなどに流れるしか選択肢が無いというのが実態でしょう。

 街を歩いていて、魅力的なカフェ(チェーン店などでは決して無く)や、パン屋さん、レストランや雑貨屋さんなどが点在していて、初めて若者や家族連れが訪れるのでは無いでしょうか。歩いていて楽しい、と思わせる工夫が、今の買物公園になされているでしょうか。道内外の魅力的な街というところは、そういった工夫がされていますし、また、歴史を感じさせるような雰囲気作りがなされています。

 空き店舗には、積極的に、そういった雰囲気作りに貢献できるお店を誘致すべきです。調理師学校などの学生やニート、あるいは自分の店を持ちたいという夢を抱いている若者達に、安価で貸し出して開店させるのも手でしょう。

 雰囲気作りに関しては、今の旭川市役所の建設関係部署はセンスの点で疑問があります。堅い、都会的なものばかり求めているようにも感じます。本当に必要なデザインというものは、どこにでもありふれている都会的なものではなく、旭川らしい煉瓦造りだったり、石畳だったり、木製品だったりするのではないでしょうか。

 

 三十五万人の人がいる旭川である。市井に知恵者は数多いる。メールを下さったお二人も、そうした方たち。そのほとんどは、謙虚で、奥ゆかしく、大きな声はあげない方たちなのだ。それら“黙する知恵者たち”の知恵を借りる場をいかにして作るか。それが市政の仕事に関わっている方たちの大事な仕事の一つだろう。そして、それが「まちの力」なのだと思うんだよなぁ。

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