夏が終わった。晴れの日が少なかった割りに、「暑いなぁ」と感じることが多かった気がする。そして、「天気予報、全然当らないじゃーん」と呟くことも少なくなかった。朝、小さな菜園の野菜たちの様子を眺めつつ、「予報じゃ午後から雨だから、水は我慢させようか…」と水遣りをパスしたのに、雨はポツとも降らず。お日様をたっぷり浴びた野菜たちが、夕方、クターッとしてしまった日が何度かあったし、その逆もしばしばだった。

 旭川地方気象台に取材した。「今年の夏は、天気予報が当たらなかったですよね」と。技術課長と技術課予報官という肩書きのお二人が対応してくれた。結論から言うと、やはり今夏、特に七月は、予報が外れることが多かったのだ。予報の的中率を出しているのだそうで、上川地方の七月の的中率は七五・八%だったとのこと。「八〇パーセントを切ると、我々としては“悪い”という自己評価です」。

 気温が高く推移し、大気の状態が不安定になって、雷雲が発生し、にわか雨が降る日が多かったのが、その理由。「頭の上で雨が降ったら、その人は『雨だー』という印象になりますが、ほかの地域では快晴ということも少なくありませんでしたから」との説明だった。「五〇%以上の地域で雨という予測の場合傘マークにするのですが、その五〇%ぎりぎりのところでのせめぎ合いでして…」とも。

 ちなみに、六月の的中率は八八・八パーセント、八月は八七・七パーセントだったという。七月の七五パーセントという数字は、つまり、四日に一日は、ハズレだったことになる。予報が外れると、気象台には苦情が山ほど届くと聞く。コンピューターなどの科学技術が日々進歩しても、お天道様の気分を読むのはなかなか難しいのだ。ましてや、地球規模の温暖化、異常気象の下ではなぁ少々複雑な気分で気象台を後にしたのだった。枕は、ここまで。

 このところ、会合や飲んだ席で「食べマルシェ、成功だったと思う?」が話題になる。三日間で七九万人を動員し、約二百のブースで、一店あたり少なく見積もっても五十万円の売り上げとして、一億円。旭川開村百二十年を記念するイベントとしては、成功だったと採点すべきなのか、という問いである。

 確かに、十月初旬としては気温が高かったという偶然の賜物も後押ししたのだろうが、買物公園があれだけの人出で、人を押しのけなければ歩けないという経験は、初めてのことだった。三日間の一日は雨だったというのに、出店者の中には三日で二百万円を売り上げた例もあったと聞く。一部報道が「来年も開催したい」という市幹部の発言を報じたが、それは予想外の売り上げでホクホクしている出店者の声に呼応したものに違いない。

 この「食べマルシェ」を含め、記念式典やシンポジウム、市のキャラクターの公募など開村百二十年事業には約一億円が投じられ、大手広告代理店が受注した。現場で準備や撤収の作業にあたった業者の一人は、「採算はギリギリ赤字にならないかな、というレベル」と話しながら、「代理店が札幌の会社に発注し、中にもう一つ下請けの会社が入って、実際に仕事をした自分のところは、孫受け。まぁ、こんな規模の大きな仕事は滅多にないから、採算は二の次で、社員ともども良い経験と勉強をさせてもらったと考えている」と笑う。限られた準備期間の中で、社員の先頭に立ち、通常の仕事と並行して徹夜で準備にあたり、成し遂げた達成感をさわやかに語ってくれた。

 そうした、市の「丸投げ」に対する批判について、百二十年記念事業担当の市総合政策部は、「広告代理店には、出来る限り地元の業者を使うよう強く要請した。しかし、テント一つとっても、旭川と周辺からだけでは全く足りなくて、全道から調達しなければならないという事情もあり、一部にそうした不満もあるかもしれない」と説明する。大規模なイベントについてのノウハウを持たない市が、業者の選択など細かな部分を代理店に任せるのは致し方ないのだろうが、地元の業者がピンハネされた後の「孫受け」じゃあなぁ…。

 ところで、「来年も」についてだ。今年は「開村百二十年」という大義名分のもとで、一回こっきりの記念事業として企画された「食べマルシェ」だが、仮に来年も開催するとなれば、新たな大義名分、目的が必要になる。「予想外に人が集まったから、もう一回やってみるべか」程度の“腹”で開催するような話ではないし、この後、五年、十年、二十年と持続する祭りを想定しなければならない。祭りには、理念というか、精神的な柱が欠かせない。ただ、食べ物を売ったり、食ったりするのでは、祭りとは言えないし、まちのイベントとして長続きするはずもない。

 最前線で走り回った担当部署の職員たちは「今はヘトヘト状態で、来年のことなど考えられる状態ではありません」という中で、市幹部のどなたかが予想外の人出に舞い上がって、「来年も」と口走ったようだ。が、市民の間では「果たして、成功だったのか?」と議論の対象になっている事実をお伝えしておく。

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