北海道の方言に「おだつ」という言葉がある。「図に乗ってはしゃぐ」という意味だ。子どもの頃、かなりおだつ性分だった。母親が編んだ新しいセーターを着て、街にお出かけ。はしゃいで走り回って、水溜りで転んで、せっかくの新しいセーターが泥だらけ。「そんなにおだつから」と叱られて。さすがに還暦を一年後に控えるこの歳になると、酒を飲んだ上の奇行は時折あると自認しているが、「おだつ」ことはなくなった。

 「法務大臣とはいいですね。二つ覚えときゃいいんですから。 個別の事案についてはお答えを差し控えますと、これがいいんです。 わからなかったらこれを言う。で、後は法と証拠に基づいて適切にやっております。この二つなんです。まあ、何回使ったことか」

 テレビが繰り返し映し出す柳田稔法務大臣は、得意満面だ。経歴をみると、一九五四年(昭和二十九年)十一月六日の生まれだから、五十六歳。東京大学教養学部に入学したが中退。寿司職人を志し、その後、同大工学部に入学、卒業したとあるから、かなりの変わり者。面白い人物なのだろう。地元・広島市での国政報告会での問題発言も、ある意味で正直に大臣の現実を報告したのだったろう。しかも、見ている側が恥ずかしくなるほどの中年オヤジの「おだちぶり」で。

 昨年八月三十日の総選挙。飾り物に過ぎない「お大臣」をはじめとする政権が、官僚に丸投げしているこの国の政治が、もしかしたら変わるかも知れないとの思いを込めて、選挙民は「政治主導」を掲げる民主党に一票を投じた。ブレブレのお坊ちゃま・鳩山政権の迷走、小沢一郎元幹事長の不透明な巨額政治資金事件、そして今夏の参院選惨敗…、凋落の兆し著しい民主党が、それでもなお、マスコミ各社が行う世論調査の政党支持率で、かつて半世紀以上も政権党であり続けた自民党を上回っているのは、「希望を託して投じた自分の一票に責任を持たねば」という選挙民の意地の表れだと見るが、いかがか――。

(工藤 稔)

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