電話で取材の申し込みをした時に、なにか違うな、と感じた。お会いして、取材した折も、こちらの意図をおもんばかりつつ、丁寧で、的を射た、誠実な受け答え。電話での印象そのままだった。取材を終え、雑談したい気分になって尋ねてみた。「市役所に勤めて何年ですか?」と。「まだ、三年です」との答え。応対の所作から、もう少し年齢が上かと思ったと伝えると、「民間の金融機関に四年ほど勤務して、それから転職しましたから、年齢はご想像の通りです」と笑った。

 彼の人柄や性格ももちろんあるのだろうが、お役所勤務が長い職員が漂わす、独特の雰囲気とは明らかに異なる、仕事に対する意識というのか、お給料の出所をわきまえているというのか、とにかくお会いして良かったと思わせる応対であった。似たような気分を過去にも味わっている。慇懃無礼とは正反対の態度や物腰に、「あなた、本当に市の職員なの?」と問い返してしまった彼も、大学を出て民間企業に七年勤務した後、市役所に転職したという経歴の持ち主だった。

 「お役人的体質」とは一概には言えないのは知っているし、個々の生い立ちや資質も影響するのだろうが、「おいおい、お前さん公僕の意味を知ってるか」と問い詰めたくなる場面に少なからず遭遇すると、「あなた、しばらく民間企業で修行して来たらいかが」と言いたくもなる。

 私が、十指に余る職業を転々とした後、今の職業に就いた頃だから、一九八〇年代後半から九〇年代にかけて、ちょうどバブル経済の余波がわずかながら北海道にも及んでいた時代、市の職員が民間企業で研修する制度があったと記憶する。国中が、まさにあぶく銭で浮かれていて、民間企業にも、そしてお役所の側にも、実態は別にして、良い意味の余力というか、余裕のような気分もあったのだろう。三十歳代の市の職員が、数カ月単位で百貨店などに出向していた。

(工藤 稔)

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