友人のラーメン店主から「着なくなった喪服を集めて、被災地に送りたいんだけど…」と相談された。話を聞くと、彼の元社員が仙台でラーメン店を経営していて、そのNさんから「喪服を送ってくれないか」と依頼があったのだと言う。

 「Nの店はそれほどの被害はなくて、ガスや水道が復旧した時点で商売は始められたのだが、ヤツは自分の店を閉めて、被災地の避難所を回ったんだ。全国から米は届くんだが、避難所では炊事ができない。Nは、その米を預かり、自分の店で炊いて、『温かいものが食べたい』という人たちの要望に応えて、カレーを作って配って回ったのさ。昔から、そんなヤツなんだ」

 「避難所で、『喪服がほしい』という声を随分聞くと言うのさ。Nは自分で二百着ほど集めて届けたそうだが、まだ全然足りないんだそうだ。六月十日前後に、被災地の各地で合同慰霊祭が開かれるらしい。その時に、黒い服で送ってやりたいのだが、喪服も黒いネクタイも、黒い靴下も靴も、ワイシャツも、全部津波で流されちゃって何もないという人が大勢いるんだって。肉親を見送る時に、せめて黒い服で、という気持ちは分かるじゃない。古くても、多少破れたりしていても、構わない。サイズも大きくても小さくても、求める人がたくさんいるから、大丈夫だって。工藤ちゃん、新聞で呼びかけてもらえないかな」

 スリムだった若かりし頃に着て、今は押入れの奥やタンスの片隅に眠っていたりしている喪服を集めて、被災地に送りたいと思います。男物、女物、サイズは問いません。古くても構いません。ただ、和服は着替えの場所がないので、遠慮したいとのこと。出来れば、クリーニングしているものをお願いします。黒いネクタイと靴下、靴、白いワイシャツもあれば喜ばれます。こちらもサイズは問いません。四日には発送し、十日の慰霊祭に間に合うようにNさんが現地の避難所を回って、サイズなどを合わせながら希望する人たちに直接届けます。

(工藤 稔)

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