西川将人市長が再婚する。本紙の取材に対して、市長ご本人が認めた。

 昨年十一月の市長選で圧勝して間もなく離婚していた。これまで住んでいた豊岡のアパートを引き払い、永山のマンションに新居を構えたらしい。周辺の話では、三歳の子どもが一人いるという。十二日に後援会のビールパーティーが開かれることから、その場で市長から報告があるかも知れない。

 いずれにしろ、何かと暗い話題や停滞感が覆うわが旭川にとって、若き市長のが安定した私生活を送る環境を整えたということは、おめでたいことだ。心からお祝いを申しあげる。枕はここまで。

 先月二十八日から三十日にかけて、新潟県と福島県を襲った記録的豪雨は、死者三人、行方不明者三人、両県を中心に最大で約四十万人に非難勧告・指示が出るという大災害になった。

 二十九日夜、会合を終えて帰宅し、遅めの夕飯をとりながらNHKテレビのニュースを観た。豪雨の様子を伝えるニュース。おおよそ次のような内容だった。「新潟県のある川のダムで、水位が危険な状況に達したため放水を始めた。川が急激に増水する恐れがあるから、県は下流の住民に避難を呼びかけている」。

 あらら、ダムというものは、川の水位を調整するだの、夏枯れを防いで川の環境を良くするだの、水道・発電だのといった治水・利水の効用が喧伝されるが、ひと度、“想定外”の豪雨に襲われて、ダムの能力を超える状況に陥れば、下流域の住民に「避難せよ」と命じ、調整・コントロールの役割なんて手放して、ダム本体を守るために放水してしまうんだぁ。そう思った。

 翌日、新聞四紙に目を通し、前夜の「ダム放水」の記事を探したが、私が見落としたのでなければ一行もなかった。仕方なく、インターネットでNHKのニュースを検索したのだが、見当たらない。アナログおやじのパソコン操作だから、往々にして目指すサイトに行き着かない場合があるのだけれど、ふと、次のような掲示板の文字が目に留まった。

 「新潟2河川の堤防が決壊→五十嵐川・大谷ダムも放水―NHK新潟県のニュースがすでに消えている。洪水の原因を隠蔽か?―」

 書き込んだ方によれば、ダム放水のニュースは、三十日朝の時点でリンク切れだったそうだ。私に見つけられないはずだ。「グーグルにあったキャッシュを載せておきます」とあるので、社の女性スタッフに頼んで探してもらった。なにせ、「キャッシュ」の意味さえ分からないものですから…。それが次の、NHK新潟放送局のニュース原稿。少々長いが引用する。見出しは「五十嵐川・大谷ダムも放水」。

 ――新潟県は三条市を流れる五十嵐川の上流にある大谷ダムについても、雨の影響で規定の水位を超えたため、午後五時四十分からダムにたまった水の放流を始めました。五十嵐川の上流にある笠堀ダムでも午後四時ごろから放流が行われていて、新潟県はこれまでの雨に加えてダムの放流の影響で川の水位がさらに上がる恐れがあるとして、下流の三条市の住民に早めの避難を呼びかけています。

 私が前夜見たニュースはこれだった。おそらく、新潟放送局エリアでオンエアされたものが、全国ニュースに使われたのだろう。

 掲示板の筆者が書く「隠蔽」かどうかは分からない。翌日にリンク切れになった理由も、様々な推測はできるが、この稿の趣旨とは異なるからやめる。言いたいのは、こうした豪雨が来襲した場合、ダムは治水の役割を放棄するどころか、洪水の原因をつくってしまうという事実だ。

 先月十二日の本欄で、「玄海原発の『やらせメール』で、サンルダムの不思議な『意見陳述』を思い出した」の見出しで、道北・下川町のサンル川に計画されているダムについて書いた。事業を進める国土交通省北海道開発局が九八年(平成十年)、流域の全住民を対象に実施したアンケートでは「ダム建設」を求めた人は七%だったのに、〇五年に開いた流域住民意見聴取会のために募集した「意見陳述」では、陳述を申し込んだ百七十人の七七%にあたる百三十一人が「ダムの早期着工を望みます」という摩訶不思議、不自然な現象が起きていた、という内容だった。

 その陳述申し込み書は、例えば「名寄市近郊でも何時大雨が降り、水害が起こるかもわかりません。ダムは水量調整に必要なものとテレビで知りました。一日も早いサンルダムの着工をしてほしいと思います」(名寄市・四十一歳・女)に代表される、“素直”に事業者の言葉を信じる庶民の声で満ちている。あたかも、ダムが完成すれば、百年に一度の大雨が降っても、水害の心配は全くございません式の絵空事を信じる“無垢”の民の意見の羅列である。

 五百億円余の血税を投じ、サクラマスの群れの自然産卵を目の前で見ることが出来る、国内でも稀有な渓流を潰してしまうダム計画である。今回の新潟・福島豪雨で、ダムがどのような役割を果たし、一方でどんな災害を引き起こしたのか、事業を進める開発局は、素直で無垢な流域の住民に報告すべきだ。国交省の組織を動員し、調査検証して、これまで蓄えた膨大なデータを駆使すれば、簡単なことではないか。

 形式だけの、流域の首長を集めた「検討の場」なんて、寸毫の意味もない。そんなことは、優秀なお役人の集団だもの、とうの昔に分かっているのでしょう? ねぇ、フェアにやりましょうよ

(工藤 稔)

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