「この程度の放射線であれば大丈夫である」「ただちに健康への影響はない」という国の発表を私たち国民は信用していない。この手のいい加減な「安全宣言」を三月十一日以降、何十回耳にしただろう。だから、福島県が「安全宣言」をした同県産の新米を、その宣言通りに受け入れる国民は少数だろう。安全と危険の境界は「五百ベクレル」。では、四百ベクレルは、安全か? 二百ベクレルならば、もっと安全か? という話である。

 フクシマ以前も、フクシマ後も、「原発は必要だ」と主張し続ける大新聞が、その「編集手帳」でこう書く。「放射性物質の検査で福島産米すべての安全が確認され、新米の出荷が可能になった。ひとつ心配なのは、科学的根拠もなしに福島産というだけで食卓から遠ざける心ない風評被害である…何の傷もない福島生まれの光の粒たちが、悲しみに吼える声を聞きたくはない」。

 原発の安全神話の増長に一役も二役も買って来たマスコミに、放射能から自らの身を守ろうとする庶民の行動を批判する権利などなかろうに。

 共同通信は十二日、チェルノブイリ原発事故の後、住民対策に取り組んできたベラルーシの民間研究所の副所長が、日本記者クラブで会見し、東電・福島第一原発の事故を受けて日本政府が設定した食品や飲料水の放射性物質の基準値が甘すぎ、「まったく理解できない」と批判し、「早急に現実的な値に見直すべきだと述べた」という記事を配信している。

 記事によると、日本では飲料水一㌔㌘当たりの放射性セシウムの暫定基準値は二百ベクレル。一方、ベラルーシの基準値は十ベクレルと二十分の一だ。さらに、内部被ばくの影響を受けやすい子どもが摂取する食品について、ベラルーシでは三十七ベクレルと厳しい基準値が定められているが、日本では乳製品を除く食品の暫定基準値は五百ベクレルで、子どもに対する特別措置がないことも問題視し、「三十七ベクレルでも子どもに与えるには高すぎる。ゼロに近づけるべきだ」と指摘したという。

(工藤 稔)

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