友人の連れ合いがガイガーカウンターを買った。国産。十万円。彼女は、“ガイガー小僧”になっちゃって、あちこちの放射線量を測りまくる。「ここは、〇・〇三シーベルト」「庭の雨樋の下は〇・〇五マイクロシーベルト」。聞けば、意外な場所の線量が高いのだそうだ。例えば、お店の中とか。森の中にも高い場所がある。理由は不明だ。彼女は言う。「高い低いは別にして、北海道にもフクシマの放射性物質は飛んで来ているのよ」。

 読売新聞十月二十七日付「くらし面」に、「放射能を落とす下ごしらえ」(椎名玲・吉中由紀著、中央公論社)なる本が出版されたとあった。副題は 「肉も野菜も魚もこれで安心」。「洗う」「煮る」「血抜きする」といった下ごしらえで放射性物質を低減する手法を指南する内容だという。料理の際に、昔な がらの「ひと手間」を、だそうな。

 朝日新聞十月二十四日付社会面に「高放射線量の中古車 追う―消えた福島ナンバー」の見出しの記事が載った。「高い放射線量の中古車が、全国を転々としている。うわさの車を追った」で始まる。千葉県で仕入れた 「いわきナンバー」のミニバンを大阪に運び東南アジアに輸出しようとしたが、国が定めた基準値(毎時五マイクロシーベルト)を超える毎時百十マイクロシー ベルトが検出され輸出できなかった。何度も除染し、エアコンやワイパー、タイヤも交換して再測定したが三十マイクロシーベルトまでしか下がらない。仕方な く、輸出はあきらめて国内で売ることにした。国内の売買に放射能に関する規制はない。

 ガイガー小僧、放射能を落とす指南本、汚染された中古車の行方――、三・一一以前には、間違いなく存在しなかった、起こり得なかった、これらの現 象を読み解けば…。つまり、私たち日本人は、これからほぼ未来永劫、放射能と一緒、そばに放射性物質がある暮らし、放射能と共存する生き方を迫られてい る、そうしなければ生きられない状況にあるのだ、ということを自覚しなければならない。

(工藤 稔)

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