知人の女性から電話がかかって来た。声が興奮してる。「ねぇねぇ、サケがいっぱいよ。一、二、三…、八匹。バシャバシャしてる。産卵してるのかな。すごーい、すごーい」。

 〇九年から三年間、水産総合研究センター(旧さけますセンター)が資源回復試験を目的に毎年五十万匹の稚魚を放流した。二年前に放流した稚魚が三 年魚に成長し、子孫を残すために帰って来ているのだ。しかも、忠別川の、稚魚を放流した場所に、まるでピンポイントの正確さで。

 本紙に「北の自然保護」を連載している寺島一男さんが代表を務める大雪と石狩の自然を守る会は、「石狩川にこそサケを」を合言葉に、一九八四年 (昭和五十九年)春から、卵から飼育した稚魚を放流し続けてきた。水産総合研究センターが試験地として旭川を選定したのも、守る会の長い活動があってこそ だろう。

 そうした市民を巻き込む地道な運動は、河川管理者を動かし、サケの遡上を阻害している深川・花園の頭首工に魚道が設置された。まだまだ不十分な魚 道だが、それでも子孫を残す責務を負ったサケたちは“故郷”を目指し、体をボロボロにしながら海から百六十キロも川を上り旭川にたどり着く。

(工藤 稔)

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