昨年五月から六月にかけて、本欄で「被災地の方々に送る喪服を集めています」と呼びかけ、多くの方々に協力していただいた。男女の喪服のほかに、 黒の靴下やストッキング、ネクタイ、靴、白のワイシャツ、数珠、ハンカチなど本当にたくさんの喪の品々が弊社に届いた。きっかけは、旭川を拠点にラーメン のチェーン店を展開する友人の元社員、Nさんからの依頼だった。

 仙台市内でラーメン店を営むNさんは、震災直後から、被害が軽かった自分の店の商売を休止し、厨房でカレーライスを作って、被災者への炊き出しを始めた。食材を必死に探して買い集め、調理して、翌日被災地に届ける。一日おきに五百食の炊き出しを続けた。

 そのきっかけは、震災の前、一週間に三度もラーメンを食べに来ていた常連さん「石巻のおっちゃん」だった。彼の安否を確かめようと、「石巻から来 ている」というかすかな情報を頼りに現地を訪ねた。そこで実際に見た、知った、痛ましい状況が、Nさんを炊き出しに奔走させたのだった。

 商売上で付き合いのある多くの会社からカレー粉や容器、食材、プロパンガスなどの提供を受けて避難所を回り、炊き出しをしながら被災者の声に耳を 傾けるNさんは、六月十日前後に、犠牲になった方々の合同慰霊祭が予定されていることを知った。遺族たちの「せめて黒い服で送ってやりたい」という切実な 願いに応えたいと、旭川の元上司のところにSOSを発信したというわけだ。

(工藤 稔)

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