前々週の本欄、「功罪半ばする研究者の死をそんなに賞賛して報じていいのか」を読んだ複数の読者から、メールやはがき、電話をいただいた。「偉そうに、お前なぞに辻井先生を批判する資格なんかあるものか」とお叱りの言葉も覚悟していたのだが、違った。その中のメールの一通のさわりを。

 「新聞だけではなく、テレビのニュースも『湿原の保全に大きな貢献を果たした偉大なる研究者の、悼まれる死』という報道でしたから、北海道に来て間もない小生は、北海道の自然を守った素晴らしい先生が亡くなったのか、と心の中で手を合わせました。

 ところが、貴紙を読むと『僕が知っている辻井達一氏は、天塩川水系のサンル川に計画されているサンルダムについて、事業主体の国土交通省北海道開発局がアリバイづくりの目的で設置した魚類専門家会議の座長として、開発局のお膳立てに沿った議事進行に努めた、立派な御用学者としてである』と書いてあるではありませんか。インターネットで調べてみました。おっしゃる通り、賞賛の情報がある一方で、御用学者としての辻井氏の厳しい評価の情報もたくさんありました。

 人の見方は一面的ではないと分かってはいますが、それにしても手のひらを返したような、この差はどうしたことだろうと、とても複雑な心境になってしまいました。私たち、情報を受け取る側が、きちんと判断する基準というか、学習能力というか、とにかく鵜呑みにしないバリヤーを持つ必要があるんですね。ありがとうございました」

 八十一歳で亡くなった、辻井達一・北海道環境財団理事長のお別れ会が一日、札幌のホテルで開かれ、教え子ら七百人が参列したと報道された。冥福を祈る。枕はここまで。

(工藤 稔)

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