安倍政権が再び「原発依存」に立ち返るエネルギー計画を正式に決めた。今なお放射能を逃れて十三万人以上が「流浪」を強いられているフクシマの後、国民の大多数の意を受けて、民主党政権が「原発ゼロを目指す」方針を決定してから、たった一年半。私たちは、再び、原発の「安全神話」を信じる国の民になり下がる。フクシマを体験し、今もその体験の渦中にあるのを忘れたかのごとく。

 少し前、三月のことなのだが、東京電力柏崎刈羽原発がある新潟県の泉田裕彦知事が、二〇一一年の東日本大震災発生時に米政府の原子力規制委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏と対談したと報じられた。その折の泉田知事の発言が、この国の為政者たちの、国民の命に対する責任感の度合いを見事に浮き彫りにしている。同月十五日付の朝日新聞の記事を引用すると――

 ヤツコ氏は柏崎刈羽原発について「地元の避難計画はできているのか」と質問した。

 泉田知事は「機能しない計画は作れるが、実効性が伴わない」と答え、理由として労働者の被曝線量限度が法令で厳しく定められており、住民輸送に必要なバスの運転手に避難指示区域に入る指示をするのが難しいと指摘。「民間人の線量基準を緩めるか、救助してくれる部隊をつくるか、この合意なしに自治体に避難計画を作らせるのは無理だ」と強調した。すでに避難計画を作った自治体もあるが、「形だけで実際には機能しない計画だ」とも述べた。ヤツコ氏は「避難計画が不十分なら、米国では原子力規制委が原発停止を指示するだろう」と指摘した(引用終わり)。

(工藤 稔)

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