五月初旬の連休中に種をまいた菜の花が芽を出し、このところの陽気で少しずつ背を伸ばしている。さほど日当たりが良くない、自宅の横や裏の小さな畑を耕し始めて十年ほどになるが、菜の花は初めてだ。家人は「辛子和えにするのは、花が咲く前よね」と楽しみにしているが、さて、そこまで成長してくれますかどうか。

 畑の土をいじりながら、どうにも気分がすぐれない。「のんびり野菜なんて作っている間に、この国はどんどん良くない方向に向かっているのではないか」と思えてならないのだ。最初は驚いて、恐怖して、拒否しなければ、と考えているのだが、そのうちに慣れて、気にしなくなって、忘れたりして、無関心になる。その繰り返しの果てに、十年どころか、五年もしないうちに、もしかすると三年後には、自民党の加藤紘一・元幹事長が、なんと共産党の機関紙「赤旗」のインタビューに答えて警告しているように「集団的自衛権の議論は、やりだすと徴兵制まで行き着きかねない。なぜなら戦闘すると承知して自衛隊に入っている人ばかりではないからです」という状況に向かっている。「そんなこと、私らの目の黒いうちはあり得ないって。ハハハ」なんて高をくくっていると、本当にそうなる。

 安倍晋三首相が口先で、「論理の飛躍」なんて取り繕ったって、煙に巻いたって、集団的自衛権の行使って、自衛隊が米軍と一緒に戦争が出来るようにするということなのだ。米国の要請があったり、時の総理が必要だと考えれば、地球の反対側まで自衛隊が出て行くということなのだ。自衛隊員の血が流れることを自衛隊員も、国民も、覚悟を決めなさいよ、ということに他ならないのだ。

 日々あふれるニュース、取捨選択するいとまもない大量の情報の流れに惑わされている気がする。例えば、新聞やテレビが一斉に、横並びで、「北朝鮮が拉致再調査」「特定失踪者含め包括的に」「政府 独自制裁解除へ」などとトップニュースで報じたりすると、私の中の警戒警報が鳴る。国民の目を逸らしているうちに、その背後で、都合の悪いことが密かに進められ、気付かれてはならないことが隠しおおされ、忘却の彼方へ葬り去られる。例えば、こんなニュースも――。

(工藤 稔)

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