少し前のことだが、友人でもある読者からファクスが届いた。新聞記事の切り抜きである。添えられた手紙には、「貴兄などは、下にある『池上彰の 新聞ななめ読み』に目を奪われ、このような私たちの暮らしや商売に直結する、いや直撃するであろう記事を見落していやしないか、そう危惧して、お節介と思われるのを十分承知でファクスしてみます(笑)」とあった。
送られて来たのは、九月四日付の朝日新聞朝刊のオピニオン面「耕論」の一部だった。彼の言う通り、紙面の下段には、世間を騒がせた池上氏のコラム「慰安婦報道検証 訂正、遅きに失したのでは」が載っている。朝日が一度は掲載を見送った池上氏のコラムを「池上さんと読者の皆様へ」のお詫びの一文と、「池上さんのコメント」を添付してようやく掲載した、あの日の紙面だ。
友人が「見落してやしないか」と心配してくれたのは、「風向きは変わったか」のタイトルのインタビュー記事。短いリードに「安倍晋三首相が内閣を改造した。高支持率に支えられた一年八カ月。首相の言葉、地方の経済、社会を取り巻く空気、そして風向きがどう変わったのかを考えた」とある。三人とは、日本語学者の金田一秀穂・杏林大学教授、漫画家・小林よしのり氏、そして北海道中小企業家同友会代表理事・守和彦氏である。それぞれの記事に付された見出しは、金田一教授が「言葉の力 信じない首相」、小林氏が「思考停止の空気を利用」、そして友人が、「私たちの暮らしや商売に直結する」と評してわざわざファクスしてまで私の注意を喚起しようとした守氏のインタビューには「『津々浦々』ってどこだ」の見出しがあった。

(工藤 稔)

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