小欄で、生産性などほとんどゼロの新市庁舎の建設が、このまちが抱える幾多の課題の中で、それほど優先順位が上なのか、と繰り返し主張してきた。だが、「建設する」という西川市長とお役人の意向に沿って、手続きは着々と進んでいる。有識者や公募市民でつくる「市庁舎整備検討審議会」も、市議会の「庁舎整備調査特別委員会」も、予定通り「新庁舎建設による整備が最も望ましい」という結論のようだ。それならば、「建てる」を前提に、後世に悔いを残さないよう、賢い選択が出来るよう、考えて行こうと思う。
十六日、日本建築学会(JIA)が、現庁舎の保存活用を求める意見書を旭川市に提出した。その「意見」の要旨を紹介しよう。
――旭川市総合庁舎は日本を代表する建築家である佐藤武夫(一八九九―一九七二)の傑作として広く知られており、一九五九年度(昭和三十四年度)に日本建築学会賞を受賞している。
モダニズム建築の世界的な保存顕彰団体、DOCOMOMOインターナショナル(モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織)日本支部は、〇三年(平成十五年)に実施した「日本におけるモダン・ムーブメントの建築一〇〇選」の一つに、この旭川市総合庁舎を選定している。モダニズム建築としての高い評価は、海外へも広く伝えられている。
現庁舎は当時の旭川市職員と佐藤が共同で建築した、歴史的にも景観上も優れて価値の高い、市民の共有財産。旭川駅周辺開発「北彩都」でも使用を推奨され、随所に取り入れられている「煉瓦(レンガ)」をいち早く戦後建築に取り入れた建物は、これまでのまちづくりと新たなまちづくりを繋ぐ大切な顔である。
構造体の補強や機能に応じた整備を施し、末永く活用していくことが地域資源の有効活用の視点からも求められる。
JIA北海道支部旭川会(軽部望・委員長)は、十一月から十二月にかけて、この総合庁舎について三回連続のセミナーを開いた。「DOCOMOMO一〇〇選に入った旭川市庁舎ってどんな建築?」「日本の耐震技術について」「建築家佐藤武夫とは?」「もし保存できるなら、どのような利活用の方法があるのでしょうか?」など、建築のプロとしての立場や視点から、しかも一般市民にも敷居が高くない、質の高いセミナーだった。
いただいた資料の中に、佐藤武夫が旭川市庁舎を設計した当時の思いを記した文章があった。少し長いが引用する。

(工藤 稔)

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