旭川市が、私立の旭川大学の公立化を検討する方針を固めたと報じられた。新年度予算に調査費を計上し、一年間かけて、旭川大と調整を図りながら具体的な内容を詰めるという。

 昨年十月、八十歳で他界した長原實さん(家具メーカー、カンディハウス創業者)を中心に活動してきた、旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会(伊藤友一・会長代行)の会員の一人として、また足かけ六年にわたって取材してきた記者として、今回の市の方針決定にいささか意見を述べたい。断わるまでもなく、あくまで、良い方向に進むことを願ってである。

 「全国から、世界から、若者や研究者が集まって来る大学は絶対に実現できる」という強い信念を持つ長原さんを会長に頂く「市民の会」が求めてきたのは、「ものづくり」あるいは「デザイン」に特化した、国際的レベルに到達する大学の開設だった。長原さんの言葉を引けば、「二十世紀の美術や建築、生活様式全般に強い影響を及ぼし続けたドイツのバウハウスのような」、いわば「超絶した大学」である。

 聞けば、旭川市は旭川大学の保健福祉学部と、距離にして約七十㌔北にある名寄市立大学の同名の学部とが競合するという理由で、幹部が何度も足を運び調整をしているというではないか。申し訳ないけれど、少子化が進む現実を知りながら、既存の大学と学生の取り合いをするような、調整を要するような、そのレベルの公立大学をこの時点で創設する意味があるとは思えない。

 市のある幹部は、「求められているのは、旭川を含む道北地域の特性を生かした、この地域でしか出来ないカリキュラムを持つ大学だろう。少子化で将来の経営が危ぶまれる私立の旭川大学を救済する目的で公立化し、市のお金を投入するという方向で、市民のコンセンサスが得られるのか」とした上で、「箱物を新たにつくるのではなく、道立の高等技術専門学院や国の中小企業大学校、あるいは市の工業技術センターを統合する形で、ものづくりに特化した小さな単科大学をまず立ち上げる。併行して旭川大学を整理しながら、将来どこかの時点で統合する、それが一番の近道だし、長原さんが目指した理想の大学像に近いと思う」と西川市長の方針に異議を唱える。

(工藤 稔)

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