全国展開する企業の経営者(64)が、「私が言うと迷惑をこうむる方が出るかもしれないけど、あなたならはっきり書けるでしょう」と前置きをして、こんな話をしてくれた。

 ――一九九〇年に竣工した東京都庁舎の建築費は、千五百億円です。当時の東京都の人口は千百八十万人。都民一人当たり、一万二千円の負担です。バブル経済の真っただ中でしたが、それでも“壮大な無駄遣いだ”と大きな批判を浴びました。旭川の人口は三十五万人です。一人当たり一万二千円で計算すると四十四億円。バブルがはじけて以降物価はほとんど上がっていませんが、仮に一・五倍と多めに見積もっても、新市庁舎は六十六億円。それが限度でしょう。まぁそもそも、庁舎新築の是非は別にして、ですけどね。

 一月十五日に西川将人市長が発表した「新庁舎建設基本構想案」によると、「周辺の民間賃貸ビルを有効に活用するなど新庁舎の規模縮小に努めます」と言い訳しながら、建設工事費は百二十億円。解体撤去費や仮設庁舎費、移転費を含めると最大百五十三億円に達すると見積もる。近い将来、旭川市の人口は急激に減少し、二十年後の二〇三五年には二十六万人になると予測される。現在の人口から実に二五%減る。人口予測は、大きくは外れない。

 市は、新庁舎の延べ面積は、三万平方㍍と試算する。小欄は昨年十二月二十二日号で「そこに商工会議所や社会福祉協議会を入居させるなどのアホらしい考えは聞き流せ」と書いた。

 八日開かれた市議会の庁舎整備調査特別委員会で、小松あきら議員(共産党)は、「庁舎整備検討審議会のメンバーの一人が商工会議所を代表して、新庁舎への入居を要請しているのは違和感がある」と質した。担当部長は「審議委員が副会頭であり、特に『おかしい』とは思わない」と答弁した。

 私は「おかしい」と思う。こうした市が設置する審議会や検討委員会の委員には、当事者を入れないのが原則ではないか。商工会議所の副会頭が審議委員に名を連ねて議論に加わり、その同一人物が新庁舎に商工会議所を入居させろと要望する、おかしくないか?

 金谷美奈子議員(無所属)は、「商工会議所が市役所内に入ることは、選挙のこともあり、政治的な懸念がある」と追及した。その通りだ。歴代の会頭、副会頭らの多くは、国政・地方を問わず、選挙では自民党候補の選対幹部を務めるのが通例だ。その団体の事務所を市役所庁舎に入居させる。西川市長は初出馬から一貫して民主党の支持を受けて出馬し、当選している。不可解と言わざるを得ない。どだい、商工会議所が市役所庁舎に入居できるなら、他の経済関連団体、あさひかわ商工会や中小企業家同友会、民主商工会にだってその権利があると突っ込まれたら、どう答える。

 

(工藤 稔)

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