舛添要一東京都知事(67)が、ついに辞職に追い込まれた。選挙で全面的に支援した自民党と公明党までが、不信任決議案を出そうとしたってんだから、もう、義理も信義も、もちろん大義なんて、どこの国の昔話だ、みたいな風景よ。新聞もテレビも、これでもか、まだ辞めないか、いつ辞める、と叩き続けた。今回の騒動が起きる前から「舛添嫌い」だった家人が、「これって、イジメよね」と同情するほどのボコボコ状態。

 私は前号に「舛添知事が、家族で回転ずしを食った費用を政治資金で支払った道義的責任を追及する都議たちが、年間七百二十万円もの使途の一部を秘密にしたままって、それでいいんだべか。舛添知事を誕生させた自民党や公明党は、都民に謝らなくていいんだべか」と書いた。辞めるほどのことなのかなあ、という気分だった。

 十六日付朝日新聞のオピニオン面「耕論」が、ジャーナリストの江川紹子さんのインタビューを載せている。見出しは、「『祭り』騒ぎ 報道反省を」。そうだよなあ、と同感する部分を引用してみると――

 「もうげんなりして見たくもありません。テレビや新聞の報道のことです。舛添さんのクビをとることが目的になって『早く辞めよ。この道しかない』と走り始めると止まらない。『祭り』状態です」

 「そもそも『東京』の知事のことを連日、全国津々浦々にトップニュースで伝える、会見も生中継。そんな必要があるのでしょうか。マスメディアの東京中心主義、極まれりです」

 「もちろん舛添さんの公私混同は批判されて当然です。でも一刻も早く辞めさせなければならない問題なら、なぜ週刊誌が伝える前に大きく報道できなかったんですか」

 「都庁のなかには記者クラブがあって大手メディアが常駐しています。記者は会見にも出られるし、都庁を歩き回って会いたい人に会え、資料も利用できる。情報にアクセスできるチャンスを最大限いかして取材できるのです」

 「こういう時だからこそ、舛添都政を冷静に点検し、辞職のメリット、デメリットを解説するようなメディアはないのでしょうか。次は都知事選に誰が出るか、そして参院選と政局報道になるのでしょう。いつもの繰り返しです」

 「メディアの役割が権力監視というなら、それを果たせなかったのです。反省すべきだと思います。落ち目になった人をたたくのが権力監視というなら、中央の元気な政権の監視なんかおぼつかないです。人々のメディアへの信頼がどんどん後退していくでしょう」

 インタビューの中で、江川さんは、「前経済再生担当相の甘利明さんのカネをめぐる問題は、いったいどうなっちゃったんでしょうか」と指摘している。「表舞台から引っ込んだら報道しなくなるわけでしょう」と。報道陣の前に出てきて、下手な言い訳をしたり、弁解をしたりする人に対しては、気分が悪くなるほど指弾しながら、「睡眠障害」を理由に病院に逃げ込んだ人は、忘れちゃう。

 

(工藤 稔)

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