六月二十七日午後零時半から、市役所総合庁舎二階の第二応接室で開かれた、「まちづくり対話集会」なるものを取材した。西川市長が初当選時から続けている市民との対話集会で、今回が九十回目になるという。「対話」の相手は「赤レンガ市庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」(代表・大矢二郎東海大名誉教授)の会員の方々。旭川市が現総合庁舎を解体して、新しい庁舎を建て、併せて市民文化会館も解体、新築するという方針に異議を唱え、新築する庁舎は最低限の規模に抑えて、彼らが「赤レンガ庁舎」の愛称で呼ぶ現総合庁舎を改修して活用しようと提案している市民グループである。

 不覚にも、私は、会場に入るまで、「まちづくり対話集会」だとは認識していなかった。というのは、この日、考える会は市長に「提言」を手渡すと聞いていたからだ。

 この提言は、考える会が発足する前、日本建築家協会(JIA)北海道支部旭川会が企画した現庁舎の歴史や価値をアピールする展覧会と昨年十一、十二月に開いた三回のセミナー、そして考える会が主催して今春から三回開催したシンポジウムやワークショップで出された意見やアイデアをまとめたものだ。会のメンバーには、建築の研究者や建築士ら、その道のプロが名を連ねる。誰かに頼まれたわけでも、報酬や対価があるわけでもない、純粋に現市庁舎の歴史的価値を尊び、このまちの文化度を貶(おとし)めたくない、との理念や危機感から発した行動が結実した提言である。

 私は、西川市長は「無礼だ」と思う。考える会の提言を受け取る場として、第九十回目の対話集会はふさわしくない。その道の専門家たちが、知見や学識を結集し、行政に向かって提言しようという時に、それを受ける側が、九十回目になる恒例の対話集会に当てはめる、なんと不遜な態度、見下した姿勢だろう。

 市のホームページに、「まちづくり対話集会における意見・提言の市政への反映状況一覧」が掲載されている。そこにある、「老人クラブ連合会の会員の活動などを広報誌でPRしてほしい」とか、「河川敷のパークゴルフ場の芝等の整備はきちんとお願いしたい」とか、「市営の合同墓地をつくってほしい」とか、そうした市民の意見や要望とは、考える会の提言は、はっきり言って次元が異なる。

 市長が、考える会のメンバーと会う、対話するというならば、市が六月に公表した新市庁舎建設に向けた「基本計画骨子」と、考える会の提言の両方を公平にまな板の上に載せて話し合うべきだ。現庁舎の文化財的価値をどう評価するのか、耐震あるいは免震工事をするとしたらコストはどうか、文化会館の解体新築にはいかほどの工費を要するのか等々、具体的に、ガチンコで意見を闘わす場でなければならない。

 写真を見てほしい。大矢先生の「提言」についての説明を聞く西川市長の苦々しい表情を。専門性を持つ市民グループが、自らのまちを思い、労苦を惜しまず、時間をかけてまとめ上げた提言を説明しているときに、この態度はいかがなものか。少なくてもこの場面では、あなたたちの行為はワンダフル、歓迎する、敬意を表する、尊重する、というのが、まちの大統領としての姿勢だろうと私は思う。西川市長は、我がまちにこうした無私の精神を持つ市民がいることを誇りに感じないのか、と。

 

(工藤 稔)

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