一日付朝日新聞によると、原子力規制委員会が、廃炉にした原発から出る放射性廃棄物のうち、原子炉の制御棒など放射能レベルが比較的高い廃棄物(L1)の処分の基本方針を決定したという。おそらく今後、私たち道民に長期間かつ、深く関わるだろう問題だ。ちょっと長いが、以下記事を引用する。

 ――(L1は)地震や火山の影響を受けにくい場所で70㍍より深い地中に埋め、電力会社に300~400年間管理させる。その後は国が引きつぎ、10万年間、掘削を制限する。これで、放射能レベルの高いものから低いものまで放射性廃棄物の処分方針が出そろった。

 原子炉の廃炉で出る放射性廃棄物は、使用済み核燃料から出る放射能レベルが極めて高い高レベル放射性廃棄物と、L1、原子炉圧力容器の一部などレベルが比較的低い廃棄物(L2)、周辺の配管などレベルが極めて低い廃棄物(L3)に大きく分けられる。

 埋める深さは放射能レベルによって変わる。高レベル放射性廃棄物は地下300㍍より深くに10万年、L2は地下十数㍍、L3は地下数㍍との処分方針がすでに決まっていたが、L1は議論が続いていた。

 (中略)電力会社が管理する期間については「数万年とするのは現実的でない」として、300~400年間とした。その後は、国が立ち入りや掘削がされないように対策を取るとした。(後略・引用終わり)

 ほとんどお笑いの世界ではないか。三百~四百年前、つまり江戸時代は「現実的」で、一万年前の縄文時代や十万年前のネアンデルタール人の時代は、電力会社にとっては非現実的だが、万世一系の天皇陛下がおわします国にとっては「現実的」である、という意味なのか?

 フクシマから五年を過ぎた今も、革新的な凍土壁が画期的な効果を発揮するはずだった東京電力福島第一原発では、放射能にまみれた地下水のダダ漏れが続く。五年前、突然の流浪を強いられた人々が、「除染」という言葉の奇術で集められた天文学的な汚染土・汚染物で埋まる故郷に、兵糧攻めを古里恋しに擬態した、巧妙な追い立て漁法に絡め取られて帰還させられ始めている。

 あれほど国民から指弾、忌避された原子力村の住民たち、政治家も、御用学者も、電力や原発企業の関係者も、そして高級官僚も、一時の危機的状況下でしたたかな免疫力を獲得し、さらに強固になったかに映る。

 朝日報道の翌日、日本経済新聞に、「核のごみ最終処分場候補 人口密度 基準にせず 経産省」の見出しの記事が載った。以下引用。

 ――経済産業省は1日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場候補地の適性を示す『科学的有望地』の選定基準に関する方針を示した。人口密度などの社会的要件は反映させず、火山や活断層などの自然条件だけで適性を3段階で評価する。都市部を除けば、建設への理解が進まなくなる恐れがあると判断した。年内に有望地を提示する(中略)

 特に海岸から20㌔㍍以内は廃棄物の海上輸送に有利なため「より適性の高い地域」と区分する。(後略・引用終わり)

(工藤 稔)

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