この原稿を書いている時点で、二〇一六年が、あと一週間で終わる。何やら、あわただしい一年だった。個人的な感慨を含めて、胸に去来するあれやこれやを書いて、小欄の締めにしよう。

 二カ月前、満六十五歳になった。十二月十五日、初めての年金が金融機関の口座に振り込まれた。記帳された年金額を眺めて、複雑というか、寂しいというか、言いようのない気分にさせられた。今はまだ、会社から報酬を頂いている。だがあと数年で職場を離れることになるだろう。「残りの人生、この年金の範囲で暮らさなければならないんだなぁ」。地元企業の役員をリタイヤした先輩女性に諭された。「年金生活になったら、三・六街なんて行けないんだからね。覚悟しておきなさいよ」。確かにその通りだ。経済観念の薄い私にも、それくらいの勘定はできる。

 私たちの暮らしは年々苦しくなっている。これから、若者も、壮年世代も、もちろん年寄りも、もっと厳しくなる。息を吐くようにウソを言うあの方が「一億総活躍社会」とぶち上げるのだから間違いない。年金は削られ、医療・介護費の負担は増す。消費税は一〇%どころか、早晩二〇%に引き上げられるだろう。あらゆるレベルで税金の〝取り立て〟がせちがらくなる。老体に鞭打って、子どもを放り投げて、誰もが活躍を強いられるのだ。

 聞きました? ビールと発泡酒、第三のビールの酒税が統一されるという話。そもそも発泡酒も第三のビールも、税金が安いからメーカーは研究を重ね、技術を磨いて、必死になってビールに近い味を作って来た。私たち飲む側も、安いから、味については大目に見て「ビールのようなもの」を受け入れたのだ。その味に身体が慣れて、本物のビールを飲むと「濃すぎるな」と感じる向きもある。かく言う私も晩酌は第三のビール派だ。

 世界の真ん中で輝くニッポンを目指す政権は、メーカーと私ども消費者にも配慮してくれて、七年ほどの時間をかけ、同じ酒税、三百五十㍉㍑缶で五十五円に統一するんだと。現在の酒税は、ビールが七十七円、発泡酒四十七円、第三のビールは二十八円。税金は「取れるところから」「貧乏人から」むしり取ろうという、お上の本性丸見え。

 家人が昨年から、所用で三週間に一度、札幌に出かける。今春までは「Sキップフォー」(四枚綴り・九千九百六十円・三カ月有効)があったし、私の助言に従って、冬はほとんどJRを使っていた。国鉄の黄金時代を肌で知っている私には、「冬道は心配だから、JRで来てね」という鉄道神話が染みついている。ケチではないが、自分のために金を使うのを嫌う彼女は、夏の間は、行きは料金が安いバスで、帰りはJRでというパターンが多かった。

 ところが、今春から、JRは「Sキップフォー」を廃止した。往復割引の「Sキップ」(五千八十円)はあるのだが、有効期限が六日しかない。だから、行きはバス、帰りはJRという使い分けが出来なくなった。しかも、片道だけ買うと、自由席特急券と合わせて四千二百九十円。めちゃくちゃ高い。これって、何だか、「乗らなくていいよ」と言われているみたいに感じません?

(工藤 稔)

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