市役所の新庁舎を建設する基本計画(案)に対して市民の意見を聞くパブリックコメント(意見提出手続)の提出期限が今日、一月十日だ。受付開始は十二月一日。なぜ、年末年始の気ぜわしい時期に設定したのか、首を傾げざるを得ない。一月中に「基本計画」を策定するという、市役所の都合が優先された結果なのだろう。

 市民からどんな意見が寄せられても、計画は変更されることなく予定通りに着々と進む。「パブリックコメント」などと横文字を使って、いかにも民主的な手法を採用している雰囲気を漂わせるが、要するにアリバイ作りの手続きなのだ。本気で市民の意見に向き合おうとするならば、少なくても年末年始は避けるべきだし、どうしても年末年始を挟むならば、提出期限を一月末まで延期すべきではないか。

 そもそも論で言えば、このパブリックコメントに突き進むまでの行政手続きは、どう見ても正常ではない。市長の正式な諮問機関である「市庁舎整備検討審議会」(委員長=八重樫良二・旭教大教授)は、「新庁舎の建設に当たっては、文化会館の建て替えと合わせた一体的な敷地利用計画とします」と明記する「基本計画骨子」(骨子)を土台に議論し、結論として「骨子に沿って基本計画策定を進めるように」求める答申書を市長に提出した。ところが市長は、文化会館については、大規模改修して使い続けるか、建て替えるか、まだ決めていない、と表明した。つまり、市長の意向で審議会の議論も答申も、無に帰したのだ。

 市長も担当の市職員も、事あるごとに「これまで時間をかけて積み上げてきた」と言う。「だから今さら大きな変更は出来ない」と。これを詭弁と言う。積み上げられたはずの土台が崩れているのだから。基本計画「案」から、慌てて文化会館に関する記述を削って体裁を取り繕っても、審議会の議論の前提が変わってしまった。言うまでもなく審議会の答申は意義を失ったのだ。立て替え論議は白紙に戻すのが、手続きを重んじる行政の正常なやり方ではないか。

 どうしてそんなに急がなければならないのだろう。市役所なんて、一年に一度行くか行かないか、そんな施設だ。西神楽や永山に住む友人は、「支所の方がワンフロアで用事が済むから、よほど便利だ。どうして本庁舎にそんなに金を注ぎ込むのか意味が分からない」と言う。正論だろう。だいたい「シビックセンター」ってなんだ? 市役所ばかりが賑わって、商店街は閑古鳥になるのかあ? JR駅前の百貨店が撤退し、巨大な空きビルと残されたキャノピーが寂寥感を漂わせるまちに、百五十億円もの巨費を投じて市役所が新築される。恐らく建て替え論に進むであろう文化会館と合わせれば、建設費はなんと二百五十億円以上になる。

 

(工藤 稔)

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