福島県出身の読者でもある友人から私信が届いた。「フクシマと沖縄は、同じ構図だ」と喝破する男である。彼の心情が覗くメール、紹介しよう。

 ――今月末で、年間被曝線量が二〇mSv(ミリシーベルト)を超えることが想定される帰還困難区域以外のエリアの避難指示が、一斉に解除されようとしています。今後は二〇mSv以下の地域は、被災地とは認めない。避難が必要なエリアとは認めないということですので、解除されれば、さまざまな支援策は打ち切られることになります。

 「自主避難者」への住宅費補助支援も、避難する必要が無いのに勝手に避難しているのだからと、当然のように切られます。

 帰還しなければ、いっそう金銭的に困窮することは目に見えていますし、帰ったら帰ったで、金銭的なことはもちろん、これからずっと低線量被曝にも怯えながら暮らさねばならないということです。

 帰るも地獄、帰らぬも地獄。絵に描いたような、福島切り捨てです。どれだけの人が、この事実を知っているものでしょうか? そして、原発再稼働、オリンピックにまっしぐらといったところですかね。

 何はともあれ、三月三十一日は、原発被災者にとって大きな節目になろうとしています。悔しいし、なんとも、もどかしいです。

 酒の席で、「森友学園」が話題になった。国有地が異常な安さで払い下げられたにもかかわらず、政権は「法令に従って適正な処分が行われた」と木で鼻をくくったような答弁を続ける。五十代の元気な経営者が、やにわに「朝日新聞や読売新聞も、同じようなことやってるんでしょう? 自分たちのことを棚に上げて、何を騒いでいるんでしょうね」と発言した。

 もちろん、お酒が入った席のバカ話である。だが、というか、だからこそ驚いた。彼の仕事は自民党ベッタリの業界だが、彼個人は良識や判断力のある聡明な経営者である。それが、こうしたデマもどきの情報にすっかり篭絡されて、森友学園問題の本質から目を逸らされてしまっている。本人はそのことに気付いていない。「そんなこと、どこにでもある話なんでしょう」と不正に寛容になっている。国民の財産が不当に廉売されても怒らない。その物わかりの良さに驚愕したのだ。

 確かに、彼が言う、朝日新聞や読売新聞、産経新聞だけでなく、テレビ局なども国有地を時価の半分以下の価格で払い下げてもらった事実は過去にある。だが、それは四十年以上も昔の話で、私はそれを是としないし、当時も批判はあったのだろうが、売却価格は国民に最初から明示され、言論機関という公共性を考慮して優先的に払い下げるという大義名分があったのである。現在進行形の、異常な値引き、その価格の隠蔽、政治家の口利きが明らかな森友学園の問題とは全く次元が違う話なのだ。

 

(工藤 稔)

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