現市役所総合庁舎をこの会のメンバーは「赤レンガ市庁舎」と呼ぶ。慈しみを込めた、とてもいい愛称だと思う。「赤レンガ市庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」の十三回目の会合が十四日夕、市民活動交流センターCоCоDe(宮前一ノ三)で開かれた。大矢二郎・東海大学名誉教授を代表に、建築のプロや普通のオジサン・オバサンら、新市庁舎を建設するにあたり、築六十年の赤レンガ市庁舎を残し、活用することを求める市民グループだ。

 この日、「旭川赤レンガ市庁舎の奇跡と未来」という一冊の冊子が参加者に配付された。建築士でつくる日本建築家協会(JIA)北海道支部旭川会が二〇一四年九月から二〇一五年二月にかけて、旭川や札幌で三回開催した「総合庁舎展」を図録にして残しておこうと企画されたものだという。

 B5判三十㌻の冊子は、赤レンガ市庁舎の「誕生」「源流」「系譜」「現在」そして、「評価とその未来」について、たくさんの写真を織り交ぜながら、丁寧に取り上げ、解説していて、読み物、物語としても優れた出来栄えだ。

 旭川市は、新たな市庁舎を建設するにあたり、赤レンガ市庁舎を解体すると決めた。小欄で、幾度も指摘したように、一連の行政手続きは「解体ありき」で進められた。途中、瑕疵(かし)や齟齬(そご)が少なからず指摘されたが、西川将人市長は、立ち止まって考えることなく、頑固に「解体」に向けて突き進んだ。

 会合の中で大矢代表は、六月末までに三万筆の署名を集めたい、と述べた。考える会は、昨年十二月、赤レンガ市庁舎と市民文化会館の保存・活用を求める署名二万四千五百七十五筆を市に提出している。その後、署名集めのペースは落ちたが、あと三千四百筆で、三万筆に達するという。

 「あきらめない」と大矢代表は言う。その手立ての一つが、庁舎建て替えの大きな理由とされる「耐震性」の問題だ。二十年も前、一九九七年に旭川市が実施した耐震診断で、建物の一部の三階部分が「IS値=〇・〇〇四」という異常に低い数値が示された。この見るからに危険極まりない印象を醸し出す数字が、解体を主張する人たちの論拠になっている。

 ところが、現庁舎が建てられた一九五七~五八年当時、佐藤武夫設計事務所に派遣された市建設部の元職員、石崎義敏さん(85)が、道庁の指摘で当初の設計を見直し、構造計算をやり直したと証言した。旭川市が耐震診断に使った「竣工図」と呼ばれるものは、構造計算をし直す前のものだった可能性があるという。

 

(工藤 稔)

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