護国神社祭が始まる前の日、翌日と翌々日の最低気温が三度だか、四度になるとの予報を耳にした。遅霜が降るゾ。あわてて畑の野菜の苗に帽子を被せたり、ビニール袋で囲ったりした。農家の友が「招魂祭(護国神社祭)が過ぎるまでは油断できない」と言っていた。幸い、苗に被害はなかったが、気候が何だかおかしい。

 不動産業の友人の父親は九十五歳。兵隊に引っ張られたり、造材の仕事をしたりして途中十年ほどのブランクはあるが、幌加内町で少なくても七十年間、農業に従事した。今は、離農して旭川の息子の会社の近くのアパートで暮らし、小さな畑を耕している。
 その超ベテラン農業者が「今年、畑はダメだな」と言っているという。現役の頃、春の畑起こしの時点で、その夏や秋の天候を予測し、深く起こしたり、浅くてもいいと判断したり、お天道様と相談しながら七十年を過ごした方の予測だ。ご本人は、「歳を取って、だいぶ分からなくなった」と嘆いているとも聞く。七十年の経験則にもとづく予報が外れることを祈ろう。枕はここまで。

 九日付の日本経済新聞の一面トップの見出しは「原発新増設を明記 エネ基本計画 経産省が提案」。以下、記事のリード。

 ――経済産業省は国のエネルギー基本計画(3面きょうのことば)の見直しに着手する。将来の原子力発電所の新増設や建て替えの必要性の明記を検討する。原発依存度を低減させる方針は堅持しつつ、長期的に電力の安定供給や技術や人材の確保のために最低限の原発が必要だと提起する考えだ。ただ原発再稼働は進んでおらず、世論の慎重論も根強いため、新増設のハードルは高い。(引用終わり)

 日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で六日、ウランとプルトニウムが入った保管容器から大量の放射性物質が飛散し、作業員五人が内部被曝する事故が起きた。そのうち五十代の男性職員の肺からは、二万二千ベクレルのプルトニウムが検出された。残りの四人も大量の放射性物質を吸い込んでいて、国内最悪の内部被曝事故だという。

 日経の記事は、スクープでもなんでもない。もちろん、他紙も後追いはしていない。このタイミングで、どうして一面トップで、「きょうのことば」を付けて、しかもご丁寧に三面に関連記事まで載せるほど力を入れるの? という感じ。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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