モリやカケの問題で騒がれるのは嫌だし、政権を組む公明党は大事な都議選への影響を懸念するし、とにかく国会を一分でも早く閉じてしまえ、国民の批判なんかいつものように早晩おさまるに決まってら――一強独裁・安倍政権は、「中間報告」という奇策を使って、論議が深まれば深まるほどボロが出る「共謀罪」法案を成立させて、頬かむりを決め込もうとしている。

 そして、またぞろ、「猫だまし」で私たちを懐柔できると高をくくっているらしいのだ。二十日付日経の記事。「新看板は『人づくり革命』」「首相、再び経済優先」「人材投資、財源が壁」の見出しが躍る。以下、そのリード。
 ――安倍晋三首相は19日の記者会見で、経済最優先に再び回帰する考えを強調した。新たな看板は「人づくり革命」だ。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡る問題などで生じた負のイメージを払拭し、政権浮揚につなげる。ただ内閣支持率が下がったところで「経済最優先」を強調する姿には既視感も漂う。人材投資は新味が乏しく、財源の確保も大きな課題だ。(引用終わり)

 記事によれば、「テロ等準備罪」(共謀罪)を新設する改正組織犯罪処罰法の成立や、加計学園の問題で離れた女性や無党派層の支持を取り戻す狙いと、教育の無償化を叫んで悲願の憲法改正への布石にしよう、ということらしい。

 記事は「支持挽回の法則」と小見出しを配して、二〇一三年に特定秘密保護法の成立後に成長戦略のてこ入れを表明、一五年には集団的自衛権を認める安全保障関連法を成立させた直後に「一億総活躍社会」の実現を打ち出した〝実績〟を指摘し、言下に「またですか…」「それ、通じますか…」感を漂わす。

 二十三日夕、ケーブルテレビ・ポテトのCSチャンネル「ТBSニュースバード」の中継で、文科省の前川喜平前事務次官が日本記者クラブで行った会見を見た。新聞やテレビで一部を切り取ったニュースを読んだり見たりするのと、全てを生で見る違いを改めて感じさせられた。残念ながら、国民の視聴料で成り立っている公共放送のNHKはこの会見を中継しなかった。安倍内閣の支持率を一〇ポイントも急落させるほど国民が関心を持つ事件にもかかわらず、である。

 二時間に及ぶ会見で、前川前次官は、国家権力とメディアの関係について、加計学園の獣医学部新設問題について、「私に最初にインタビューしたのはNHKだが、放送されないままで、いまだに報じられていない」と指摘した。体を張って、ある意味で命懸けで告発を決意した元高級官僚の口惜しさが滲む言葉と表情だった。

(工藤 稔)

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