旭川市の総合体育館と大雪アリーナの呼び名が来春から変わる。私たち市民は、例えば総合体育館を「〇〇建設体育館」、大雪アリーナを「△△△会館アリーナ」と呼ばされることになる。

 十一月二十四日の定例記者会見で、西川将人市長が、市有施設に愛称をつけるネーミングライツの募集に、総合体育館に一社、大雪アリーナに二社の応募があったと発表した。二〇一八年度から五年間の契約で、スポンサー料は総合体育館は二百万円、大雪アリーナは三百万円。今回は応募がなかったときわ市民ホール・勤労者福祉総合センター(二百万円)はスポンサー料を値下げして再募集するのだそうだ。さらに、旭山動物園にもネーミングライツが適用される可能性もあるという。

 〇〇と△△△に、あなたがご存知の会社名を入れて、口に出して呼んでみてください。得も言われぬ違和感を覚えません? しかも、旭川市が発注する公共事業を受注している業者の社名が愛称として採用される可能性もあるという。

 西川市長によると、十二月中に外部識者を入れた選考委員会で優先社を決定し、市と諸条件などについて話し合いを行った後、来年一月中に契約。三月中に看板付け替えなどの作業を行い、四月から愛称の使用を開始するという。新市庁舎建設を除く、ほとんどの懸案事業は、遅々として進まない現況の中で、このスピード感あふれる進捗状況はどうしたものだろう。

 言うまでもなく、総合体育館も、大雪アリーナも、ときわ市民ホール・勤労者福祉総合センターも、私たち市民の税金が投入されて建設された、市民の共有財産である。なぜ、オーナーである私たち市民が、私企業名を「愛称」と強制されて使わなければならないのか、心底、理解に苦しむ。

 市議会の総務常任委員会(上村ゆうじ委員長)で、小松あきら議員(共産党)が、ネーミングライツについて質問した。議員にも、もとより市民にも、事前の説明がほとんどなされないまま、いつの間にか進められたネーミングライツについて、その行政手続きに問題があったのではないか、という質問である。

 今年一月、庁内で作成したネーミングライツのガイドラインについて、総務部行政改革課の担当者は、議員に対して、その説明も、資料の配布も行っていないと答え、「旭川は初めてだが、他都市で実施しているところが多い。ガイドラインに沿って、積極的に進める方針を取った」「中核市の半分でネーミングライツを実施している。旭川で初めての今回、ガイドラインを作成し、このような形を取ったが、今後、取り組みを続ける中で検討・改善していく」と答弁した。

 小松議員は、「条例で定められた市の施設名が、スポンサーが付けた愛称で呼ばれることになる。このことが契約で済むというなら、市長の裁量が条例を上回ることになる。議会にも市民にも説明はなく、聞かれれば答えるという態度が旭川市の基本的な考え方なのか」などと追及したが、担当者は「他都市でもやっているのだから、問題はない」という論法で押し切った。

 旭川市役所は、いつからこんなに強権的で、乱暴な行政手法に転換したのだろう。市民に対する、丁寧さ、誠実さのかけらもないではないか。

 「他都市でも行われているから」と強弁するが、では、その他都市でも、ネーミングライツの事業に取り組むときに、議会にも諮らず、市民の意見を聞くこともなく、「他都市もやっているのだから、何の問題ない」として、尋ねられれば答えるいう姿勢で、強権的に、乱暴に、進めたというのか。行政の独善と指弾されるべき所業だと私は思う。

(工藤 稔)

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