道外で小紙を購読してくれている方から、「旭川の新聞ですから当たり前なのは分かっていますけど」とメールが届いた。いわく、「年明けから、ずっと旭川市役所の建て替えについて書かれていますが、たまには、枕にでもいいですから、安倍政治とか、憲法とか、沖縄とか、原発とか、編集長らしい話題もあっていいのになあ、と感じる今日この頃です」。

 素直にリクエストにお応えして、安倍政権のもとで、かなりきな臭い状況が現出している憲法について書こう。

 十六日の各紙は、前日に開かれた自民党の憲法改正推進本部の執行役員会が、参院選の「合区」解消に向けた憲法四十七条の改正条文案を大筋で了承した、と報じた。

 「合区」は、「一票の格差」を是正するために、二〇一六年の参院選で、人口の少ない「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入された。それを各都道府県から少なくても一人の参院議員を選出できると憲法に明記することで、合区を解消して格差が拡大しても、憲法十四条が求める「投票価値の平等」に反するとして裁判所から違憲性を問われることがなくなる、というわけだ。

 各紙は、「自民党が検討する改憲四項目のうち、初めて具体的な条文案が示された」と伝える。「四項目」をさらっとおさらいすると。

 【自衛隊】安倍首相は、九条一項、二項を維持したまま、自衛隊を憲法に明記する案を掲げる。党内には、九条二項を削除し、自衛隊の目的・性格を明確化する改正を行うべきとの意見もある。

 【緊急事態】選挙ができない事態に備え、国会議員の任期延長や選挙期日の特例を規定する。また、政府への権限集中や市民権の制限を含めた緊急事態条項を明記するという案も。

 【教育充実】二十六条三項を新設し、国が教育環境の整備を不断に推進すべき旨を規定する。また、八十九条は私学助成禁止と読めるため、条文を改正する。

 そして今回報じられた【合区解消】。参院議員は人口にかかわらず都道府県から最低一人は選出できるようにする。

 高知の友人に、「高知と徳島は、はるか土佐と阿波の時代から、徹底して仲が悪い。お互いに嫌い。いわゆる犬猿の仲というやつよ」という話を聞いたことがある。その二県が同じ選挙区にされ、統一候補を立てて選挙を戦うというのだから、「憲法を変えてでも」なんとかしてよ、という強い声があるのは事実だろう。「投票価値の平等を定めた十四条と矛盾する」という批判があったとしても、私たち北海道人のような、藩の時代という歴史を持たない者にとっては、「あら、そう」程度の関心の度合いである。

 「教育の充実」に至っては、何を今さら、改憲なんか関係なく黙っておやり。

 つまり、この二項目は「おとり」、「カモフラージュ」、あるいは「緩衝材」なのだ。自衛隊を憲法に明記し、緊急事態条項を新設して、自衛隊が海外で、米軍とともに戦争が出来るようにする改憲を実現するためのトリックである。

 二月四日付「しんぶん赤旗」日曜版に、小林節・慶応大学名誉教授のインタビューが載った。安保法制(戦争法)の審議が行われていた二〇一五年六月、衆院の憲法審査会で、識者として招かれた憲法学者三人が「集団的自衛権は違憲です」と声をそろえ、政権を慌てさせた、あの時の憲法学者の一人。改憲論者として知られる小林名誉教授のインタビュー記事を引用しよう。

(工藤 稔)

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