前号の小紙『議会みたまま』で、十五日に開かれた総務常任委員会(上村ゆうじ委員長)で、委員間討議の論議の模様を詳しく報じた。委員(市議)が市が公表した新庁舎の基本設計素案について討議する、旭川市議会としては初の〝出来事〟だ。委員は上村委員長を含めて八人。副委員長・金谷美奈子(無所属)、もんま節子(公明党)、福居秀雄(自民党・市民会議)、宮本儔(同)、小松あきら(日本共産党)、中川明雄(民主・市民連合)、塩尻伸司(同)の各氏。

 一月に行われた一回目について、小欄で期待を込めて書いた。「素案」で示された総合窓口を二、三階に配置する設計に対して、各委員から様々な異論、反対意見が噴出したのだ。それは、一階に市民に利用させるという会議・集会スペースや、市政やイベント情報のほか、地場製品などをPRする「シティープロモーション」なるスペースを配置するというレイアウトについての疑問が発端だった。

 新庁舎のキャッチフレーズは「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」。厳しい財政事情と人口減・高齢化という将来不安の情勢下、市民サービスを削ってでも、百億円以上の巨費を投じて建設する庁舎である。このまちきっての高給取り集団、市職員の労働環境を向上させるという目的だけでは市民を納得させるのは困難だ。市民にも何らかの恩恵、特典があるように見せなければいけない。だから、「にぎわい」「親しまれる」ための仕掛けを一階に置こう、というわけである。

 さすが市民の代表、市議会議員の皆さんである。そのトリックを見抜いた。

 「総合窓口は一階に置くべきだ。市民活動の支援機能のスペースを設けるために総合窓口を置くスペースがないというが、それを一階に置くことで、賑わいが演出されるのか疑問」
 「新庁舎を『市民が集うシビックセンターとする』としているが、何をやろうとしているのか分からない」
 「シビックセンターとしての役割は、当初は建て替えの計画があった市民文化会館と関連させながら、並行して考えなければ難しい」
 「文化会館のレストランを潰すので、一階にレストランの配置を考えたのだろうが、出入り口はレストラン用の小さなものでいい」

 などなど、そもそも「シビックセンターって、何なの?」という、新庁舎建設の出発点、核心が、これまで議論を積み重ね、調査や研究をしてきたはずの市議の皆さんでさえ、理解できていなかった現実が明らかになった。委員間討議の価値、ここにあり。

 そして二回目の討議である。詳細は前号を参照してもらうとして、耳を疑うような発言が、西川市政与党の市議ばかりでなく、野党の方からも飛び出した。

 討議の主なテーマは、①設計変更が可能な素案の段階で、市民への説明や意見聴取をすべきか、②一階に市民窓口を配置すべきかの二点。

 ①について、小松は「市ホームページや支所で素案を公開しているが、説明することが大事だ。時間的な制約があるが、説明することで、市民が素案をどう思うかが分かる」。金谷も「基本計画ができあがって、変更不可能な段階で説明されても意味がない。各種団体に説明したというが、誰でも参加できる場で説明することが大事だ」などと主張した。

 この真っ当な意見に対して、中川は「委員会のこのメンバーでさえ、色んな意見が出ている。市民の意見を取り入れ設計を変更する場合、大変な混乱を招く。変更する予定がないのなら、冷やかしになる。市民の意見聴取が現実的な話と思えない」。塩尻伸司も「市民の意見をどう集約していくかは、非常に難しい問題だ。素案に至るまでに一定の手続きを経ている。市民の意見を取り入れるのは重要だが、この段階で、あまりそのことにこだわると前に進まない」と反対した。

 要約すると、「設計変更が可能な段階で市民の意見を聞くと、混乱するからダメだ」というのである。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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