小欄で意識的に執拗に書いているせいでもないのだろうが、このところ新市庁舎についての意見や問い合わせの電話、メール、手紙が増えている。そのほとんどが、「そんな話、知らなかった」とか、「なぜ、そんなに急ぐの?」という声だ。

 前号で、市議会議員が「市民の声を聞くと混乱して、事業が前に進まなくなる」という趣旨の発言をしたと伝えた。ここ二年ほどの庁舎の建て替え論議は、市民に対する説明や情報公開が不足していて、基本設計の段階になって、市民ばかりでなく、市議会議員までが、ようやくその実態を知るにつけ、「えぇ? そんな話だったの?」という状況になっているのではないか。小欄で何度も指摘しているように、そもそもの「シビックセンター」なるものが、具体的な図面になって初めて、「シビックセンターって、そんな程度のものだったわけ?」となっている。西川将人市長をはじめ、庁舎建て替えを担当する部署の幹部たちは、当然、ご承知だったのだ。分かっていて、コトを進めたのでは、と推測せざるを得ない。

 その明らかな証拠をお見せしよう。紙幅の都合で来週号に掲載することになったのだが、西川市長は二月二十六日、開会中の市議会で、二〇一八年度の市政方針を発表した。その後半、「むすび」に入る少し前に、主要政策の一つに掲げる「次の世代につながるまちづくり」の中で、庁舎建設について触れている。引用すると。

 ――新庁舎建設については、平成三十一年度の着工を目指し、市民に親しまれる庁舎となるよう、今後も市民や関係団体の皆様からご意見をいただきながら設計業務などの取り組みを進めてまいります。
 これだけ。あらら、シビックセンターはどこへ行っちゃったの? あんなに強調していたのに、市民を説得するキャッチフレーズだったはずなのに…。

 ちなみに前年度、平成二十九年度の市政方針演説を見てみよう。

 ――市役所庁舎の整備につきましては、市民の意見や審議会の答申、議会の調査特別委員会での議論を踏まえて、本年一月に策定した基本計画に基づき、行政機能の向上のみならず、市民活動を支援する機能や、旭川の魅力や特長を発信する新たな機能を加えた庁舎とするため、基本設計及び実施設計に着手し、市民で賑わい、親しまれるシビックセンターを目指します。

 ね、去年は胸を張って「市民で賑わい、親しまれるシビックセンターを目指します」と謳っていたのよ。〝消えたシビックセンター〟については、市長の市政方針演説を傍聴した読者から届いたメールにもあった。

 ――いよいよ実施設計段階の今年度なのに、 百億円を超えるプロジ ェクトなのに、たったの三、四行ですか。内容も市民活動支援や新な機能が書かれることなく、驚いたことに『シビックセンター』も消えちゃいました。

 もう一通、女性からのメールには、市議会の総務委員会で論点の一つとなった、一・二・三階の「窓口配置」についてのアイデアが披歴されている。独自の図面まで添付して、「どうにかして、機能も予算もコンパクトで、メリットのある庁舎がたちますように」とある。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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