日当たりの悪い家の裏で、シイタケ栽培を始めて四年目だ。友人に誘われて、二十本のほだ木に種を打ち込み、寝かせたり、水に浸けたり、叩いて起こしたりして、楽しんでいる。去年は新たに十本増やした。この連休中に全員水に浸けてから、壁に立てかけて並べた。気温が高くなって、そろそろ出てくるかな、様子を見に行くのが日課になっている。味ですか? それはもう、食べるのがもったいないほど美味しいんです。枕はここまで。

「目が泳いじゃってるじゃない」と家人がつぶやく。「ウソ言わされて、かわいそうだな」と私。根が温和な家人、珍しく猛然と反論する。「かわいそうじゃないわよ。ウソをつきたくなかったら、辞めちゃえばいいのよ。自分で望んで、選んで、この役回りをやっているのよ。お勉強ができて、東大を出て、他にいくらでも仕事なんかあるわよ。絶対にかわいそうなんかじゃない」。
学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、国会に参考人招致された翌日の十一日、愛媛県の中村時広知事が、「県職員は子どもの使いで行っているのではない。地方公務員として誇りとプライドがある」「うそは他人を巻き込む。職員には信頼関係で結ばれている職場の仲間や家族がいることに思いをはせてほしい」などと柳瀬唯夫元首相秘書官の答弁に強く反発したと報じられた。

中村知事の反論について、柳瀬氏の話を聞こうとマイクを向けられたとき、テレビ画面に映し出された柳瀬氏の目は、明らかに泳いでいた。狼狽(ろうばい)。ウソが露見したとき特有の表情である。

中村知事は、県職員が首相官邸で柳瀬氏と面会した際に交換した名刺も公開した。柳瀬氏はこれまで「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」と否定し、前日の参考人としての答弁でも「今でも愛媛県や今治市の職員がいたかどうかは分からないが、随行者の中にいたかもしれない」と述べていたのだ。ウソの上塗りがばれた。

おろおろする姿を見せられて、男はいきなり同情する。自らの中にもある、ある種の「へつらい」がそうさせる。ところが身すぎ世過ぎを屁とも思わない女は、真っすぐ核心を突く。「いやなら辞めちゃえばいいだけの話よ」と。かなわない。

十一日付新聞各紙の柳瀬氏の答弁に対する識者の見方、分析が中々面白かった。その一部を並べてみる。まず、日経。

――「記憶はウソをつく」などの著書がある心理学者、榎本博明氏の話 「何か隠しているのでは」と疑念を抱かせる答弁だった。加計学園関係者との面会を認める一方、やりとりや出席者など詳細は「記憶にない」とはぐらかす。

脳内で記憶のネットワークが活性化すると、具体的なことを次々に思い出すもの。本当に記憶がないなら一連の出来事を全て忘れているはずだ。

質問に対して多弁に回答したが、核心をずらしていた印象も強い。追及された点と異なる回答をするのは、はっきりと答えにくい時の自然な心理。新たな事実があるのかと思わせる内容だった。

次に毎日。

(工藤 稔)

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